「アイツ黙っちゃってさ…。そのまま電話切られちった。」


以降電話も繋がらなくなって、馬鹿みたく焦って。

電車乗って、ここまで必死で来てみたけど…





「アイツ、待ってるって…約束してくれたんだけどなぁ。」


現実は捨てられてた。

アイツはオレを、待ってなんかくれなかったんだ。






「アイツが就職決まったって言ってた頃から、すれ違ってんのかなーって薄々わかってたけどね~…」


だから怖くなって、誤魔化すよう電話もメールも出来なくなってた。


話して、別れを切り出されんのが怖かったから…






「信じらんないよね~…アイツと付き合うまで、オレチョ~遊び人でさ。振られるとか、有り得なかったんだよ?」


他人を散々弄んできた末に手に入れた幸せ。

アイツが教えてくれたのは、誰かを本気で好きになるってことだったのに…





「お前…」


「ざまあって、思ったっしょ?だよね~自業自得だもんね~…」


笑ってみせる雪緒は。

本当は…泣きたかったんだと思う。


俺には気丈に振る舞ってるけど…

その顔は、ちっとも笑っちゃいなかったからだ。





今日初めて会った、いきなり家に入れろとか…

迷惑極まりないヤツなのに。


その笑顔が痛々しくて、見てるのがスゲェ辛い。



だから、






「アイツも今頃、他の誰かとさ。クリスマスを────」


自嘲する雪緒の言葉を遮って、力いっぱい抱き締めてやる。


オレなんかじゃあ、気の利いたこととか…

格好いい台詞もなんにも思い付かないから、ただ強くギュッと。






「ッ…!ちょ…いきなり、なんなの…」


ヘラヘラと返してみせる雪緒の声が、妙に上擦って耳を掠める。


抱き締めてやった、細く冷たくなった身体は。

小さく小さく震えていた。







「はぁ……なぁんかお兄さんてさ────」



アイツに似てるねって、




「はは、そりゃ微妙だな…」


「顔は断然アイツのが、イケてたけどね~!」


「…どうせ俺はクリスマスにぼっちな、イケてねぇ野郎だよ。」


「ウソウソっ、お兄さんチョ~優しいじゃん!」


見ず知らずのオレを見捨てず、家にあげたりしてさ。普通出来ないっしょ?





「…こんな時に優しくされちゃ、堪んないよ…。」


背中に回された腕で、ギュッと抱き返され。

何故だか胸の奥が熱くなる。





「ねねっ、おにーさん…」


「ん?」


返事して雪緒を見たら、チュッとリップ音がして。





「めりくり~」


「なッ…!?」


どうせならケーキ買って今からパーティーしようよ。誰もが羨むくらいうんと楽しいやつをさ。んで、






「なんなら、身体で慰め合っちゃう?」


「はあ…?」


クリスマスには良くあることじゃん?





「オレ、お兄さんになら捧げちゃってもいいけどな~?」


「え、それってどういう…」


大人なんだから解ってんでしょ?





「オレに言わせたいの?お兄さんてば、ヤラシ~!」


「ばっか、ちげぇよ!!」


兎にも角にも、まずはお祝いしましょ?


雪舞う聖なる夜に偶然巡り会い、

運命共同体となったふたりに乾杯して…



それから─────…



ね?



Merry Christmas🤍



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