「良かったのか…?」



あれから、和樹もなんとか納得して。

実際はまだ、やり切れない部分はあったと思うけど。


オレには智久さんという恋人がいる、その事実を受け止めてくれて。勘違いにも、いきなり手を出そうとした事をオレと智久さんに謝罪すると…。


和樹は静かに部屋を出て行った。






その背中を見送ってから。

程なくして、智久さんがオレにそう問い掛けてきて。


見上げると、思いのほか真剣な眼差しに射抜かれ…

ドキリとさせられた。







「なんで…」


そんなこと聞くのって、目で問い返せば。

智久さんはバツが悪そうに大きな溜め息を漏らした。






「…好き、だったんだろう?」


アイツのこと…恋人なんだから、聞かなくても解ってるハズなのに。

敢えて聞くのは、まだ和樹を想ってた頃のオレを、

智久さんは知っているからで…






「好き、だったよ…そりゃもう死にたくなるぐらい、にね。」


もしかしたら、まだ未練があるんじゃないかって。

心配してるんだろうけど…でもね、





「でも今は、智久さんだけだから…」


あんなに好きだった相手のことを、すんなり忘れさせて。こんなにもオレのことを、愛してくれる貴方がいるから。





「…んなコト言っていいのか?」


自分はすぐ真に受けてしまうから。

どうなっても知らないぞって、苦笑する愛しい人に。

オレはぎゅって抱き付いて…逞しいその胸に、これでもかって擦り寄る。





「いいって言ったじゃんか…智久さんになら束縛されたいって…」


貴方がオレを愛してくれるなら。

傍にいて、甘やかしてくれるなら。





「言ったろ…?」


俺も。一生掛けて愛してやるって。

耳元で熱く、宣言されちゃったから…。


後はもう、誓いのキスでもするしかないよね?






「どうする…雪緒?」


誓いのキスとか言いながら、淫らで濃厚な口付けを交わし…火照る身体を持て余す。


智久さんは触れたままの唇から、わざと舌を出してきて。悪戯するみたくオレの唇をチロチロと撫でてきた。



もう…ホントエロいなぁ、スーツ姿の智久さん。

分かってるクセに、オレに言わせたいなんてズルいんだから…


けど、智久さんには一生敵わないから。

オレも負けじと首に腕を回し。彼の耳元でヤらしく、





「ちょーだい…智久さんの、全部…」


甘ったるく、おねだりをしてみせるんだ。

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