「俺は…」


打ちのめされる和樹は、ショックのあまり膝から崩れ落ちる。


半ばレイプされそうになった相手だけど、元恋人だし…なんだか可哀想で。

オレが何か、慰めの言葉でも言おうとすれば…智久さんは、腕に力を込めそれを制してきた。


代わりに、自らが口を開く。






「確かにここは、お前が以前住んでた部屋だし。付き合ってた仲だったかもしれない。…けどな、この場所も雪緒も。は全部俺のもんなんだ。お前になんざ、何ひとつ渡さねぇよ。」


だからもう、二度と雪緒の前に現れるなと。


苦しいからと切り捨てて、楽な方を選び…

結局それもダメになったからって、やっぱりお前が────…なんて戯れ言を吐く。


智久さんが和樹に厳しいのは、今カレ元カレっていうのもあったと思うけど。

男として、一本筋の通った性格故に。和樹のそういう優柔不断なところが、許せなかったのかもしれない。






「雪緒…」


「ごめん、和樹。もうお前とは戻れないから…」


オレも十分和樹を追い詰めちゃったし…。

今更勝手だって、思われるかもだけど…





「智久さんと出会って、オレ幸せだから…」


別れ話もないままに、今までずっと有耶無耶だった分。今が清算の時だと思うから。辛いけど、





「…終わりに、しよう。」


このままじゃ互いに進めないから。

オレも智久さんにぎゅっと掴まりながら…和樹に向けはっきりと、別れを告げたんだ。

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