女児にお触りしたい!


 和歌山県教育委員会は県内の小学校に勤務する三十六歳の男性教諭を懲戒解雇とし――。

 

「んもおおおおお!!! 俺も、俺も、俺だってしたいよ! 小学生にいたずら!」


 狭いアパートの一室で地団駄を踏みながら、男はテレビに吠えた。

 今年で三十五歳の独身ロリコン男は、少女に対する情熱によって『教師』という職を得た。

 教育大学を主席で卒業し、彼は優秀な教師となるべく教員資格を一撃で取得、さらに教員採用試験もなんなくパスしたのだ。

 目立った問題もなく、学年主任や学科主任などを任され始めた頃である。

 彼は日々の忙しさに「ひいひい!」などと言いながら、本来の目的である小学生へのいたずらを実行できずにいた。

 それは学生の頃に夢を見て、社会人で夢の土台に乗りながらも、実行に移せないもどかしさに苦しめられていた。

 思い返せば夏祭りの翌日に、神社の裏手に落ちていた分厚い漫画雑誌が原因だ。

 見たこともないコミック雑誌で、乗っていたのはかわいい少女たちが不埒なお兄さんや教員にいたずらをされるという破廉恥極まりない成人雑誌である。

 けれども、彼はその雑誌を聖書のように読み込み、見たこともない素敵な絵柄にはじめての激しい勃起を感じ、自分と同じ年端の娘たちが――漫画ではあるが――兄や教師や同級生や浮浪者や異世界の魔王に突かれ、喜んでいるではないか!

 これは自分も経験したい。

 自分もやってみたい。

 そうして彼は「教師」を志したというわけだ。


「くそおおおっ、今年こそはいたずらするぞ!」


 気合を入れ直す。

 内申点が欲しいだろう。

 万引きがバレなくなかったら先生に……。

 おやおや××さんともあろう子が、教室でこんなことを?

 いけないなァ、リコーダーは自分のものを使わないと。

 脳裏を巡るシミュレーションは、どれも成人雑誌から引っ張ってくる引用であるが、残念なことに一度もそのような現場に居合わせたことが無い。


「しかし、どうすればクラスの子たちにいたずらが出来る。どうすればいい。仕事が忙しくてそれどころじゃない……くそっ!」

「お困りのようね!」


 バサバサと風が吹き荒れ、部屋のなかがあれる。

 本棚にぎっちりと詰まった成人向け雑誌の背表紙から猛烈な風と光が吹き荒れて、整った顔立ちの女の子が現れた。悔やむべきは女子高生らしい制服を着ていて、男がターゲットとしている年齢からは大きくハミ出ているということだ。


「なんだ、女子高生か」

「なんだとはなによ! あんたの願いを叶えてあげようっていうんじゃない!」

「そんなバカげた……。あんたが天使か神様だったら信用するけど、残念だけど俺はそんな口先ばかりの超常現象には興味がないんだ」

「ふんっ! なら、わたしに感謝する事になるわよ! あんたは小学生にいたずらをすることで人に感謝されることになるんだから!」


 ばかばかしい。

 それよりも、どうしておまえさんはそんなところに現れた――と聞こうとしたときには、すでにピカピカッと光ってびゃっと圧迫されるように風が全身を押さえつけた。

 そうして、気が付けば朝になっていた。


 翌日学校へ行った。

 子どもたちが登校してくる。

 その登校班のひとつに、妙に引っかかる娘がいることに気づいた。

 顔や身体が好みの小学三年生で、いつでもいたずらしてやろうと思える肉体である。

 その子が少し歩き方がおかしいのだ。


 すけべ教師は彼女を呼び止めた。


「どうしたんだ。なんか痛いのか?」


 その問いかけに少女は頷き「ここ、痛いの」と内股を示した。


「どれ、どこだ。ここか?」


 男は真剣なまなざしで少女の内股から足の付け根に触れた。

 服の上からではあったが、男はひどい昂奮と夢の成就に感激した。

 その一方で少女は「痛い、押すと痛いの」と訴えた。

 すけべ教師は女の子の手をしっかりと握りながら保健室に連れて行き、出勤してくる保健医と担任の先生に報告した。


 その三日後、警察が学校へとやってきた。

 すけべ教師は逮捕され……なかった。

 彼は『児童虐待を真っ先に見抜いた』として、簡単な聴取を受け、市から表彰された。

 少女は日常的に両親から虐待を受けていたのだ。


 その出来事から、すけべ教師は日常的に虐待を受けている子どもたちを見抜く力を得た。

 ちょっとのおさわりを経て……。

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