第5話
私は初めて少年の表情に意識を向けた。
あれだけ否定の意を露わにしていた私のことを、彼はどんな目で見ていたのだろう。
怖かったのと同時に気になった。
でもきっと、彼に興味を持った訳では無い。
彼は私の家族を奪った。
心を許しちゃいけない。
……はずなのに、私の口は意志とは無関係に動いていた。
「ありがとう、“お兄ちゃん”」
茶髪に白い瞳の少年、いやタツキの表情が変化した。でもそれは私の予想を裏切る形だった。
見開いて硬直したその瞳からは、やっぱり色を感じられなかった。
瞳も白目も真っ白、まるでコントラストを感じられない。
でも何故か目元を緩ませた彼の瞳が揺れているのを、私の目は捉えていた。
私が一足遅かった。
私は見た。
タツキの瞳から零れ落ちる透明なビー玉を。
ぽたりぽたりと地面に叩きつけられて割れていくビー玉が形を成しては割れを繰り返して、いつしかそれはタツキのものだけではなくなっていた。
ビー玉の欠片で水溜まりができるんじゃないかと思ったほどだった。
ーしばらくしてその場の空気は打って変わって また言い表しがたいが、暖かい空気に包まれていった。
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