ターン2 魔王セレクトと社畜先輩

順調に体制は整っている。

とはいえ、僕は数年、数十年の潜伏を計画していた。

それに比べれば、全然時間は足りていない。

そんな時に、エイリアンの話を聞いた。


「エイリアンとの戦か……いつでも殴り込めるように準備だけはしておこうか」


あまりにも展開が早すぎる。

他の魔王達はやる気あるのだろうか?

ため息をつきつつ、魔王セレクトは準備を続けた。




















配信はとても人気が出た。幼女ツヨイ。

世は妖魔の存在公表とか、エイリアン様とのガチバトルのお知らせとか、浮遊大陸三個出現とか、色々騒がしいが俺はほのぼのやって行こうと思う。短いがなんとか取れた夏休み。カメラをセットして準備完了。


「魔法少女、グリーンだよ! 今日はカブトムシを捕まえたいと思いまーす!」


 そして私はババーン! と樹液を出す。幼女可愛い。本人が言うんだから間違いない。


「ハイパースペシャルデリシャス樹液! これを木に塗りたくります!」


 樹液を塗って、待つことしばし。


 ぶぶぶぶぶ!


 すごい勢いで虫が殺到しております! 樹液を飲んだ虫が巨大化しております。


「ひえええええ」


 私は殺到する虫に耐えきれず、しゃがみ込んでしまう。

 

 転んでこぼした樹液にも虫が殺到している。怖い。


 どうしよう。どうしよう。


 ボロボロと涙がこぼれる。



「一体何をしているのかな」


 呆れた声が掛けられ、転がった樹液の入った容器に蓋をされる。手を差し伸ばされる。

 誰かと思えば、俺みたいな底辺とは違う、正真正銘選ばれし人って感じの武人さんだった。

 一般出なのにやたらと異能の力が強いんだよな。勇者と名高い勇様と親友だという。


「あ、あの」

「君、魔王?」

「えと、違います!」

「その姿は?」

「わ、私は、カードが送られてきて、誰かわからなくて、だから」

「ふぅん? そのカードの送り主について知りたい。心当たりのある人をあげて行ってもらおうか」

「どうしてっ」

「魔王は死ぬべきだ。勇は最強じゃないといけない。そうじゃないかい」


 なんてことだ、雇い主のピンチである。ジリジリと下がる。


「ステイ、武人」


 振り返ると、勇者様の称号を持つ勇様が歩み寄ってくるところだった。

 見ると武人さんもびっくりしているよう。


「勇……」

「あのさ。1人であんま突っ走るなよ。俺が怪我してんの、気にしてくれるのは嬉しいけどさ」

「参ったな。つけられていたことに気づかなかったよ」

「あれだけ派手に動いてたからな。様子を見るように上に言われたんだ。輝星国が魔王2人を抱き込んだだろ? それで、和国の方もどうにかできないかって話が出てる。むやみやたらと敵対しようとすんなって言われたろ?」

「しかしっ!! 魔王は勇を……っ!」

「魔王の1人が、俺をちょっと怪我させた。それだけだろ?」

「だけじゃない。私は絶対に許せない」


 なんと、武人さんはヤンデレだったらしい。


「はぁ。なんにせよ、引き継ぐからお前は落ち着けよ。頭冷やせ」


 その言葉と同時に、人がわらわらと出てくる。全然気づかなかった。

 武人さんも、こうなると引くしかない。


 そして、俺は諸々ゲロリンチョして、上級の資格と今までより難しい仕事が回されてくることとなり、お休みは消えた。悲しい。

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