ターン2 魔王エンドと魔王ラベラトス

魔法少女を捕獲しに行った時に、監視されていたことがわかったのは僥倖だった。


あまりバレないようにしないと。

兄さんに言われた通りに領地は育成している。


「武人。面倒なことになりそう」


 当代における勇者であり親友である勇から、相談を受けた。


「魔王と妖魔、どうも別口っぽい」

「そうなのかい?」


 思っても見なかったことを言われて、びっくりする。


「ああ、っていうか思いっきり別口だろ。なんだよショップシステムって」

「確かに、ラノベっぽいよね」

「ラノベ?」

「少年少女向けのお話ってこと。嘘の話」

「ああ、確かに。とにかく、今わかってる魔王はキエタ、ウィング、ライトシャドウ。ライトシャドウは敵対的みたいだけど、他の魔王にも接触を試みる事になった。妖魔は妖魔で、今まで通り敵対するが表沙汰にはするらしい。あと、魔王をどうしても従えろって上からのお達しだ。癒しの力は確かに必要だし、シャイニングスター国が魔王を2人も従えてるのに我が国は何もなしってのは上的に良く思わないらしい」

「ふぅん」

「ひとまず、浮遊大陸に乗り込む事になった」

「危ないよ」


 古の魔王の領地は言わずもがなだし、自分の領地は時を早めている。そして、最後の領地はライトシャドウの可能性が高かった。まだ見ぬ魔王の線もあるが。


「今更だろ」

「ならば、私も連れて行ってほしい」

「頼りにしてるぜ、親友」


 胸を叩かれて、私は頷く。

 

ええと、魔王だったら隣に立ってもいいってことなのかな?


ただ一つ確実な事がある。




 魔王ライトシャドウは敵である。





 さて、領地だが、兄の領地にいく事となった。

 一番こじんまりした領地だから、甘く見られたんだろうな。

 一番危険視されてるのは私の領地。高速で中身が動いているからね。

 実際の脅威度は、多分逆なんだろうけど。

 早速兄に連絡を入れよう。


















 テレビでは、エイリアンとのイザコザや妖魔についてなど特集している。

 妖魔と魔王がどうも混じっているようだが、まあいいや。

 

 そんなこんなで、俺も和国のほど近くに領地を解放しましたよっと。

 魔導書に各国辞書、教科書、歴史書、問題集、持っている書籍ありったけなどなども投入する。


「封印された領地と共に吹っ飛ばされた」事も伝えた。


 しばらく守護をする事も、その後は自由にしていい事も。


 封印から解けた直後から、魔法書にはアクセスが忙しい。

 ショップに質問・要望アイテムを入れてみたら、即座に買われた。


 なるほど、ゲーム時代でのショップのラインナップでは物資が全然足りないのか。

 最重要の要望はこれらしい。

 配下・領地応援セットに全種族対応ショップアイテムセット現代Verがあったからそれを移動、と。

 後欲しいのがあったら生産と輸入でなんとかしてほしい。

 ショップに輸入の参考として色々細々としたものを買って置いておこうかな。

 そんなこんなでちまちまやっていたら、かわいい弟、魔王エンドこと武人君からお願いが。

 なんでも、観光と交渉に期待らしい。

 お兄ちゃんに任せろー! 早速領地に連絡するぜ!

 

「領長。ちょっと相談があるんだけど。弟の魔王がお忍びで友達と視察に来るんだけど、相手してもらえないかな。上手く行けば、貿易が出来るかもよ。あ、正体は秘密にしているらしいからよろしく」

『なるほど。魔王ラベラトス様はいつ戻られるのですか?』

「これからもちょこちょこお願いすることはあるだろうけど、基本、君達は自由だし、お願いする時もお礼はするから安心して。断られても仕方ないし」


 悪いが、せっかく新たな形式の領地ももらったし、やるなら途中からじゃなくてニューゲームよな。

 今までの領地は放流して、新たな領地を育成頑張りたい。

 出来れば、魔王のいない別世界になんとか飛んで、そこからじっくり育成したい。


 チートキャラたくさんよりも、チートは1人派なのだ。


『しかし、魔力の補充はいかがなさるのです』

「何か考えよう。他に魔王もいるしね。弟を呼んでもいいし、再封印して元の世界に再設置してもいいし、新たな魔王を育ててもいい。なるべく要望は聞くよ」

『かしこまりました』

「とりあえず、魔石はまだ備蓄が上限まで置いてあるから、他に欲しいものある?」

『沢山ありますが、いずれ手に入れられるものでもあります。魔王様への頼み事は、魔王様にしか叶えられないことに致したく。結界の操作権と弟君の所属国、組織の情報は必要なものに入りますな?』

「もちろん。結界は領長の意志でどうにでもできるようにしておくし、知ってる限りのことを伝えよう」

『ありがとうございます』


 俺は、全く軽くみていた。

 かつてのNPCが、今はもう知恵を得て生きているということを。

 軽くみているつもりはなかったし、尊重したつもりだった。


 それでも、いや、だからこそ。無意識で、絶対的に、俺はかつてのNPCを、今の魔王達を、現実を、甘くみていたということだ。痛い目に遭わない限り、気づく事すらできない。プレイヤーの傲慢という病に、俺は罹っていた。。

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