ターン2 魔王キエタ
「違うんだ。酒に酔った勢いでつい基地は作ったが決して運用の予定はなかったんだ」
「今度は酒に酔った勢いで侵略してしまったっていうんでしょう!」
「あれいらいちゃんとお酒はセーブしている!」
「魔王様、侵略に対する対応をお願いします」
「あ、ああ、そうだな。相手は魔王なのか?」
「魔力を感じ取れません。地球人の科学力はもう少し低かったはずです」
「基地に攻め込まれたのか?」
「いえ。宙行蟲の子供が攫われました。魔王様、宙行蟲は大切な家族です。どうか」
「わかった。どうにか交渉してみよう。言葉は」
「カタコトながら話せるようです」
「逃げるのか!?」
私の大切なフェアリーであるアレンを切った女、リサがいう。
「相手をしている暇がない。私は部下に対して責任がある」
「待ってくれ! 交渉の場に連れて行ってくれたら輝星国の法律に従う限り君達の部下に国籍をあげよう!」
交渉を呼びかけていた国家秘密組織っぽい男、ジョン・スミスの提案に私は頷いた。願ってもない事だ。
そして、私は転移魔法で月基地へと向かった。
「魔王様! 来てくださったのですね」
「魔王様、助かります」
「ああ、メカ君、マギ君。非常事態のようだからね」
配下の機族、ロボットっぽいメカ君と魔法使いのマギ君と会話をし、私とジョン・スミス、さらに助手のスコット君は月基地の高い建物に案内された。リサ君は連れてきていない。連れてくるはずがない。
見晴らしのいい窓から見ると、宇宙船を宙行蟲が取り囲んでいる。
「会話は出来るのかね」
「そこで、魔王様に念話をお願いしたいのです。念話ならば、言葉を理解せずとも大体の意図は伝わります」
「わかった。念話で呼びかけてみよう」
『小さき同胞を返してもらえないだろうか。素直に返せばいい物をあげよう。少し休んでいかないかね?』
何度か呼びかけると、宇宙船が近寄ってきた。よしよし。
扉が開いて、宙行蟲が出てくる。雫族が即刻確保して抱きついた。
出てきたのは、流線形の銀色の生物。
なるほど、エイリアンなど初めて見る。
『ようこそ、地球へ。歓迎します。と言っても、ここは月なのですが』
「あなた、地球人?」
『地球の魔王という種族です。さ、どうぞ中へ』
案内して、ポーションを持って来させる。片言の輝星語が使えるようで何より。
念話と合わせることで、スムーズに意思疎通が出来た。
『これはほんのお近づきの印です』
「私、数十年、この星、観察。あなた、いない。いきなり現れた。異星人、違う?」
『古の魔王が目覚めると同時に、私達新たな魔王が選ばれた。ごく最近の事です』
「魔王、何?」
『新たなる生態系を狙うものでしょうか。人とは全く異なる進化体系を持つものです』
「魔王さん、この方の滞在目的をお聞きしても?」
『ああ、それはそうですね。研究目的ですか?』
「研究目的」『最初はそうだった。そうなら良かった。でも今は侵略準備をしている』
『えっ侵略!?』
「「「!?」」」
念話って怖い。半分心を読んでいるようなものだから。
そして、こちらの動揺も容易く伝わってしまう。
『……魔王を敵に回すのは大変ですよ。まずはポーションを持ち帰って報告なさい。すぐに仲良くした方がいいと上が判断するでしょう』
私は、なんとか動揺を抑えてそう告げた。
国家秘密組織のメンバー、ジョン・スミスにもまたポーションの備蓄をたっぷりと渡す。
暇がなくなったので、回復はポーションで各自行ってくれたまえ。
とりあえず、月基地に待機して戦時体制を整えることとなった。
ジャーシン様のショップで何かないだろうか?
魔王ウィングの力も借りれる事となったので、頑張ろうと思う。
和国でも浮遊大陸が三個浮かんでいるそうだが、そっちはダンマリだ。
辛抱強く協力を呼びかけていこう。
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