ターン1 魔王キエタ
無事金のインゴットや宝石を換金できた。一度しか通用しない手段だろうが、一息はつけた。
それどころか、設備投資もできるだろう。
最も、今私が欲しいのは人材だ。助手に再度会いに行ってみよう。
私は、職業安定所に我が助手を見つけた。
「スコットくん! スポンサーが見つかったんだ。どうか帰ってきてはくれないか」
「スポンサー? しかし、ようやくわかったんです。あなたの元では、いえ、どこでも、超能力なんて得られっこない、進化というのはちょっと背が高くなったり、逆に歯が弱くなったり、その程度のものなんだって」
「それが、できるんだよ!」
「なら証拠は?」
「このカードを持って、念じるんだ」
「透視ですか? 手品の道具?」
「違うよ!」
カードを押しつけると、スコット君はカードを手に取った。
すると、カードは消えてしまった。
「消え、た?」
「これで君は進化した! これはと思ったら、是非また手助けにきてくれ。君が必要なんだ。あっ詳細は内緒だぞ」
それから2時間後、能力を試している最中に、スコット君から連絡が来た。
コンビニ強盗に怪我をさせてしまったと言うのだ。
武族のアバターで武器に変身していた慌ててそのままの姿で転移魔法で現場に急行した。
現場では、ヒーロースーツの青年が怪我をした人の横でパニックになっていた。
肩がごっそりちぎれている。これは酷い。
野次馬がすごい。
「大丈夫かね!?」
「杖が喋った!? あ、博士!? 僕、僕、子供を守りたくて」
「わかってる。私を使うといい。傷が治せるはずだ」
私は武族に変身し、杖になった私を青年、スコット君は戸惑いながら振るった。
私は実は癒しの杖に変じていたのだ。魔王素材の癒しの杖。それは見事に奇跡を起こした。
傷が跡形もなく癒えていく。
「これで大丈夫。後は警察に任せよう」
すぐに警察がやってきて、私とスコット君は逃げ出した。傷は治したのだから、問題あるまい。
翌日どころか、研究所についてすぐにつけたニュースで既に特集が組まれていた。
「災難だったね。スコット君」
「助かりました、博士。その杖のお姿は」
「ああ」
私は元の姿に戻った。
「博士。これは一体どういうことなんですか?」
「実はね……」
私は全てを話して、私の妖精であるアレンを紹介した。
「地球侵略するんですか!?」
「しないよ!!」
「わかりました。祖国と人類に弓引かないのであれば博士の力になります」
「スコット君、ありがとう!」
そうして、スコット君と研究の進め方を相談して、早速始めることとした。
ラディッシュ(ハツカ大根)はいい……。収穫までの速さがとってもグッド。
そして、二十日後。とうとう収穫の日。
なんだか魔力を吸って育ったものは色艶がいい。じゃっかん触手っぽいものも生えていて、元気にうねうねしている。
スコット君が来るのが待ち遠しい。
ピンポンとベルが鳴って、スコット君かと出迎えにいくと、手帳を持った怖い人達が銃を突きつけてきた。
直後、彼らは影に巻かれる。
「殺すな!」
シャドウデーモンに咄嗟に命じた。
「お逃げください、魔王様!」
和服の女性が、剣を抜いて影の間を縫い、切り掛かってくる。
アレンが私を庇って切られて、思考が停止する。
「手荒な真似はしないと約束した!!」
スコット君が変身して暴れる。いたことに今気がついた。
「博士! 癒しの杖に!!」
「あ、ああ!!」
私は素早く変じて、スコット君は私を振った。
アレン。アレン、アレン。私の妖精。
傷が癒えていく。
「リサ君、待ちたまえ。攻撃は許可していない」
「しかし」
「いくら妖魔案件とはいえ、勝手な真似はよしてもらおう。ここはシャイニングスター国だ」
「くっ」
スーツ姿の男が、深く頭を下げる。
「すまなかった。私達は交渉に来た」
「武器を振るう必要はなかったはずだ!! アレンはこんなに小さいんだぞ!! 死んでもおかしくなかった!!」
「私の仲間を散々殺しておいて何を!」
「ふざけるな、実験以外では虫一匹殺しとらんわ! 蚊も殺せない男とは私のことだ!!」
「なら、我らを殺すのは実験だったとでも言うわけか!?」
「そもそも誰だお前!」
「リサ君! 下がりたまえ」
「博士、話を聞きましょう」
喚き合うリサとやらと私は、互いに宥められる。
「私はジョン・スミス。シャイニングスター国へようこそ、魔王殿」
「!!」
「私達は貴方を保護する用意がある。聞けば、他の魔王を殺そうとする魔王もいるそうではないか」
「なんだと……? アレン、そうなのか?」
「人間だって、色んな性格の人がいるでしょ? 肯定も否定もできないよ」
「それはそうだな。で、それをしてどんなメリットが?」
「治癒をして欲しい。軍警には国の為に負傷をした多くの者達がいる。報酬も支払おう」
「そんなの、普通に頼めば済む事じゃないか。まあ、怪我人に罪はないから手伝うがな。アレンの慰謝料として、報酬は倍にしてもらうぞ!」
「わかった」
まだ私がプリプリと怒っていると、魔法陣が現れて、男が現れた。
「魔王様!! 月の地球侵略基地がエイリアンから襲撃を受けています!」
「少し待とうか」
リサはそれ見たことかと勝ち誇り、スコットは、がっくりと項垂れた。
違うんだ。話を聞いてくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます