静かで、寂しい夜に少年は
鳩レースのスタートから、早三日が経った。早ければ一日で戻ってくるけど、今現在北海道から静岡まで
「ポポ太郎……今どこにいるんだよ」
僕は自分の部屋がある家の2階から、窓を開けて外を見る。冷たい風が顔に当たって寒い。今は夜中の23時、もう遅い時間だけどポポ太郎の事が気になって仕方がない。
今は
「これが……鳩レースってやつか」
僕は窓の真下から見える、庭の
「いくら頑張ったって、結局うまくいかないじゃん」
この二年、レースに参加する為に連合に加入したしわざわざ
「もういい、どうせ届かないし」
そもそも殆ど戻って来ないから、どのブリーダーも何百羽と参加させてるのに僕はたった一羽だ。これで期待とか馬鹿馬鹿しい。
何もかも
「……?」
頭に何かが乗っかった。ポポ太郎……? いや、そんなわけがない。髪をかき分けるように手を伸ばすと、何かを掴んで目の前に持ってきた。大きい、グレーの羽だ。
「ポポ……太郎?」
多分部屋の本棚上にあった羽が、窓から入った風で落ちてきたんだろう。あいつ、人を見下げられるあの場所が好きだったし。僕が弱気でいると、いつもあそこから頭上に飛んできては、頭をつついてくるんだ。
「……」
羽を見つめていると、ポポ太郎との毎日が頭の中から浮かんでくる。いつも僕の頭の上に乗っかるせいでクセ毛がより酷くなった。
「僕が学校から帰ると——ポポ太郎は……」
気付くと僕は部屋を飛び出していた。お母さんの抑止を振り切って、庭にあった自転車を動かして風を感じながら全力で漕ぎ始める。ある場所に向かって。よく分からないけど、本能的に身体が動いた感じがした。
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