第8話 三十六童子

我らは不動明王様の眷属である。

三十六人、だいたい一緒に動いている。

童子と言うように、体は童のように小さい。

各不動明王様に、それぞれ三十六童子はついている。我らを見たかったら、犬山の成田山(成田山名古屋別院大聖寺)に行ってみるとよい。しかし、置かれている三十六童子像は我らとは違っていたなあ。不動明王様の顔が一体ごとに違うように、我らも違うのでな。


我らの仕事は、見張り、報告、お使いなど。

自分達では手に負えないと思った案件はさっと不動明王様を呼びにいくことにしている。

不動明王様は、一瞬にして片付けておしまいになる。


八大童子と呼ばれている者たちが他におる。我らより後に生まれたのだが、我らより体が大きく力もあるので「兄さん」と呼んでいる。


我らのひとり、ハリカドウジは、可愛いとヨウコちゃんのお気に入りらしい。

恥ずかしい恥ずかしいとずっと言っていて、人の後ろに隠れてばかりいる。顔を見せるのがとても恥ずかしいらしい。


また、ひとり、花を持っているコンガラドウジもまたヨウコちゃんのお気に入りだ。

コンガラドウジは蓮の花を手に持っているのだが、面倒になったらしく、最近頭に差している。それが頭の上でゆーらゆら揺れてヨウコちゃんにはおかしくてしょうがないらしい。ヨウコちゃんに一度摘み取られてしまい、あれあれと見ていたら、また生えてきよった。花束になるとでも思ったのか、また摘み取ると、先ほどの花は消えてしまった。それ以来、摘み取られなくなって安堵している。


我らはしいちゃんとも仲良しで一緒に遊んだりもする。

あの金太郎レビューには参ったがな。

服を全部脱がされて、金太郎の前掛け一つで踊ったのよ。いやあ、受けたのなんの。

ハリカドウジはただでさえ恥ずかしがっているのにどうするかと見ていたら、あろうことか、金太郎の前掛けで顔を隠すものだから、大事な所が丸見えになっていたわ。まったくあいつときたら。


しいちゃんも最近は行儀見習いとやらで宮さんやくず姫さんにしごかれているので、あまり遊ぶ時間がなくなったようだ。我らも仕事で忙しくなっているしな。

まあ、あの子のことだ、ちょっとした暇をみてはまた何か企むだろうよ。次は何をしでかすことやら。


また、皆で美味しいものを食べるときは、ご相伴にあずかろうぞ。楽しみにしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る