第4話 くず姫さん


私はお使いとして生まれました。

伊勢では洗濯ばかりしていましたが、人で言うなら中学生くらいの時に修行に入りました。

私は武術が好きで強くなりたかったのです。

それで武芸の強い人を探しました。ある時まるで仙人のような風貌のただならぬ氣を放つ師匠を見つけました。

弟子はとらんと断られたのですが、どうしても、と何度も何度も頼み込んでようやくのこと弟子入りさせてもらうことになりました。が、その修行は大変でした。


水と一体になれ !? とか意味不明なことを言われたり、

大岩に挟まれ、自力で出て来いというものもありました。その岩の前で師匠がこれ見よがしに魚を焼いて食べていましたね。

川を綺麗にしろと命じられ、ヘドロに手を突っ込んでは引っかかる物を取り出して掃除したこともあります。すっかり手に臭いがついてしまい、そのまま食事をしなくてはならなかった時はさすがに師匠に殺意を抱きましたよ。


山で目隠しされて、降ってくる刀や小石を避けるという修行もありました。


川で洗濯をしている時でも、刀が飛んできたりするのですから、一時も油断はできません。


気絶させられ、手足を縛られて吊るされ火炙りにされたこともあります。

縄が燃えて体が自由になった時に、さすがになんでこんなことをするんですかと聞きました。

答えは「なんでかなー。皆こうしてきているから?」


目に頼るな、スキを作るなということを身をもって教えられたわけですが、これでは体がもたないと思いました。

逃げ出したこともありますが、どういうわけか毎回探し出されてしまいました。


師匠は放浪の旅をしていて、時々戻ってくるのですが、それまでに刀を振っておけ。お前は刀が汚い。刀の振り方も汚い。海で禊いでおけ。と散々な言われ方をしました。


転々と色々な神社を回って、師匠に言われて書簡を届けたりしましたが、行く先々で、弟子だからと大岩が落ちてきたり、汚水が降ってきたり、刀が飛んできたり。。。危険な旅ばかりでしたね。


いよいよ修行も終わった時、師匠は「これでやっと俺の仕事を押しつけられる。じゃあなー」と去っていきました。

あんのクソジジイ!おぼえてろよー。二度と会いたくないわ。戻ってきたら叩き切ってやるっ!

おっと、思わず取り乱してしまいました。


そんな酷い目に合うばかりの放浪の旅で、この世が嫌になった時、子供の主さんが、綺麗だなと私を見てくれたのです。それ以来この子を守っています。


私は自分で名を明かしたので、半分式神、半分自由に自分の意志で動くことができます。


今は、みつばさん(私の主さんの弟子)の式神のしいちゃんのお世話係を宮さんと一緒にしているわけですが、思い返すと、あの師匠にされたことと同じことをしいにもしておりますわね。ほほほ。

主さんのためにも、能力の高い式神に育てあげなくてはね。ビシビシやりますわよ。

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