第3話 待ち続けている神様


私は信長の時代に生まれた。突然、お社の砂利道に11〜12歳の体で生まれ落ちた。

私の前の御祭神が私のことを

「片割れよ」

「姉妹のようなもの」

と言ってくれたのが嬉しかった。

何をしたらいいのか尋ねるとまずは自分の仕事を見るようにと言われた。

男勝りでじゃじゃ馬とも言えるような人だったが、人の気持ちのわかるとてもいい人でお母さんのように思い、一緒にいて楽しいこともたくさんあった。


私が20歳くらいになった時、その人が悩んでいることに気づいた。

悪い願いごと(呪いもあった)であっても叶えることも、また逆に叶えないこともあった。時は戦国時代。戦のことも関わっていた。戦に勝たせるということは、かたや負けて亡くなったり苦しむ人が出るということ。そんな願いを聴くたびにまた叶えるたびに暗い表情をされているのを今でも忘れられない。

だから言った。私はその願い事を叶えるのも聴くのも反対だと。

でも、これが仕事だ。淡々とこなしていかないといけない。間違ったことでもやらないといけないことがある、とまるで自分に言い聞かせるかのようにきつく言っていた。でも、慎重に人にとってよい未来のために自分なりの答えを探し悩んで日々のお勤めをしていた。軍神である彼女は報われた人の人生の最後または逆の人生もしっかり見届けていた。そんな日々に疲れてしまったのかもしれない。

そして時代がかわり、人の願い事も良縁などの縁関係が多くなり、軍神としての仕事がなくなってきた。


お前の時代がやっときた、これからはお前がここを仕切っていくんだ。私のようにやらなくていい。お前はお前のやり方で誰かを幸せな未来へ導いていくんだと嬉しそうに言った。その未来に私はいないぞとも言っていた。本人はなんだかほっとしたような穏やかな悲しそうなどちらも混じった表情で静かに去って行ってしまった。まるで他の神社にちょっと遊びに行くかのように。


きっといく先は伊勢のあの方の所だろう。いい助言をもらいにでも行ったんだと思う。

彼女には出来なかった縁結びを私はすることができるが、できることが限られている。時代も変わり求められることも変わった。顔を見せるだけでもいいから帰って来てほしい。

きっといつか戻って来るに違いないと信じている。だって帰る場所はこの神社(家)なのだから。

どこかでこの話を聞いて、私のことを思い出して戻って来てほしい。私はまた会える日をずっと待ち続けている。


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