第48.5話
「はぁ……あの三人、まだ生きてるの?」
「残念ながら。デルムトで迷宮内の荷運びを欲しがっていたのですが、渡してよろしいですか?」
「ええ、構わないわ。使い道があるなら」
「あいつ等の身分証の『詳細鑑定』が終わりました」
「どーせ、何人か殺してるんでしょ?」
「……酷いものですよ。オーデンという男は少なくとも二十人以上、それも子供ばかり殺していますね」
「子供……? 反吐が出るわね……そんなに『縦線』が入っててよく捕まらなかったわね、皇国で」
「奴自身が皇国民ではないですし、犠牲者もおそらく他国の者で『犯罪』として立証されていないのでは、入国管理では捕らえられませんよ。うちだって無理でしたから」
「そっか、皇国では温和しくしていたってことね。何かしらの犯罪を犯して捕まっていたら、今頃は『獄』だもの」
「他のふたりも、似たようなものですね。女の方は人身売買と、自身や他者の売淫にも関わっているみたいです。おそらく『販売者』なんて職業になっているのはそのせいです」
「『商人』じゃなくて不思議だったのよね……なるほどねぇ……他人だけでなく、自分も『販売』していたってことか。最低ね」
「ニルエスは殺人はなさそうですが『線』が斜めに入っておりましたので、その手引きや盗みを繰り返していたのでしょう。【隠蔽魔法】がありますから、常習だったのでしょうね」
「なによ、とんでもない悪党ばかりじゃないのよ。皇国で捕まらなかったんで、うちでも大丈夫だと思ったのかしら。馬鹿よねぇ……皇国よりずっと、こっちの方が厳しいのに」
「只今戻りました!」
「あら? ディルク、早いわね。あの『最速』は?」
「まだ挨拶程度だからね。いろいろ店を物色していたけど、殆ど何も買わなかったから必要ないか、金がないかのどっちか」
「前者でしょうね。イスグロリエストの魔法師が貧乏なんてあり得ないわ」
「あいつ、他国の出身らしいぜ?」
「……他国の人が……あの皇国で『魔法師』になんてなれるの?」
「衛兵隊に誘ったけど断られた」
「へぇ、面白そうね。単独?」
「ああ。デルムトの地図を買ったみたいだから、そっち行ってみるよ」
「どこへ潜るか、聞いたの?」
「いや。でも、だいたいのあたりは付いてるからな」
***
「デルムト?」
「隣町じゃない……」
「はい、これが命令書です」
「……『命令』?」
「ええ、あなた方は既に『銀段四位』に落ちてますし、現在『資格停止処分』ですからね。罰則としての『命令』です」
「……行こう」
「ぐすっ、ぐすっ……く、悔しいっ!」
(……やってられるか! 俺はこのまま、別の町へ行かせてもらうぜ)
「おっと」
「……!」
「判らないとでも思ったのか? おまえ程度の【隠蔽魔法】が通じるのは、ガウリエスタ人くらいのモノだぞ」
「ちょっと……腹が痛くて……よ」
「我慢しろ。ああ、言っとくが『犯罪者』には監視が付いている。看破と攻撃魔法を持った、な。命令に逆らおうとするなよ」
「………解ったよっ! くっそ!」
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