第1.5話
「やっと厄介払いができたぜ」
「あいつは金を食うだけで、本当に役に立たなかったな」
「弱い奴が悪いのよ」
「ちょっと、オーデン! ちゃんと自分の荷物、持ちなさいよ!」
「俺はずっとそいつを持ち歩いていなかったぞ」
「でも、あんたのでしょ? ほらっ、こんな馬鹿でかい外套、誰が使うのよ」
「くそ、重い……おかしいな、これくらい今までは……」
「ははは、ガイエスに持たせてたんだろ?」
「あいつは、荷物を持つしか能がなかったもんな」
「荷物持ちは雇った方がいいんじゃない?」
「無駄だ。自分の物は自分で持てばいいだけだ」
「ねぇ、なんであの剣、おいてきたの? 売ったら少しは、お金になったじゃない」
「ばーか、あんなくず鉄の剣なんか、いくらでも売れないよ」
「おめーが運ぶなら持って来てもよかったがよ、ナスティ」
「いやよ、あんな格好悪いボロ剣、持ち歩くの恥ずかしいわ」
「それにしても、今回のはナスティの案で上手くいったよな」
「でしょう? あいつ、本当に鬱陶しかったんだもん。最近は偉そうに説教までしてきて! 碌に魔法も使えないくせに」
「そうだよな。はじめから荷物持ちでって約束だったのに、図々しく戦闘にまで口出ししてきた」
「あたしを後ろから見てて、鼻の下伸ばしてたのよ! 気持ち悪いったら!」
「ねぇ、リーチェス、早くこの町出ちゃいましょうよ。あいつそんなに長くは捕まっていないでしょ?」
「すぐに、あいつが犯人じゃないとばれるだろうな。ガイエスは……弱すぎるからな」
「そうだね、俺も早い方がいいと思う。ウァラクの国境までは馬車使っても半月くらいかかるし、この町にも憲兵隊が来るって話だよ」
「ニルエスは臆病だから、すーぐコソコソ逃げたがるのね」
「うるせぇ、おまえだって今、早く出たいって……」
「おい、俺のマグレットに触んじゃねーよ」
「い、痛いよ、リーチェス!」
「兎に角、この町にいる理由はない。さっさと行くぞ」
「……ふん、イスグロリエスト……か。アーメルサスの方がいいと思うがな」
「無理よ、リーチェス。あの国、ガウリエスタからは金段以上の冒険者しか入れてくれないわ」
「そうだよ、ウァラクならまだ国境が通れるし、イスグロリエスト皇国経由の方がヘストレスティアにも入りやすいよ」
「ふふふっ」
「なんだマグレット?」
「ちょっと思い出しちゃった。ガイエスってすっごく訛ってたじゃない? 地名とか人の名前とか全然ちゃんと言えてなくて」
「ああ、ミューラ人だったからな。ちゃんと聞き取れないんだろうが、田舎もん丸出しで恥ずかしかったな」
「もうそういう恥をかかなくて済むっていうのが、一番嬉しいわ」
「まったくだぜ。お、あの馬車、使えるんじゃないか?」
「じゃあ……『借りる』とするか。な? オーデン」
「ああ、そうだ」
「御者は要らないわよね?」
「『無理に連れていく』のは悪いからな」
「じゃあ、ここで『休んでいて』もらおう」
ザシュッ
「意見が一致していると、決断が早くっていいわね」
「……」
「どうした? リーチェス」
「いや……疲れてんのかな? 剣が重く感じる」
「あら……中に子供が居るじゃない」
「こども? あたし、子供嫌い」
「ひ…っひぁっ! ぐっぐあぁ……!」
「……子供を、ひとりにしておくのはよくない。可哀想だからな」
「いつも通り優しいのね、オーデン。その子も『お父さんと一緒の所』に行けて喜んでるわよ、きっと」
「食い物があるぜ。お、燻製肉だ」
「それは無駄にしちゃいけねぇな。俺達で有効に活用してやろうぜ」
「やっさしーわね、あたし達」
「なんか、ガイエスに言ってた言い回しが癖になっちまったな」
「あら、いいじゃない。そういう『耳当たりのいい言葉』の方が、馬鹿は信用するものよ。ふふふっ」
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