第11話 客人は男の子 3

 調理担当に料理を注文して、私は客室へ戻った。

 祐太朗はまだ、アニメを見ていた。

 私が、客室と居間の引き戸を、開けた音に気付く様子はない。

 かなり、集中して見ているな――。

 ビックリさせようか。そう思った時、

 祐太朗の頭上の数字が、目に入った。

 ストレス値が来館時は95だったのが、85まで下がっている。

 もしかしたら、私の接客態度の成せる技なのかもしれない。よしっ!この調子でやろう――。

 決意し、さっそく。

「おいっ。祐太朗!」

「なんだっ!夕日っ!」

 またも呼び捨てかっ!

 だが、大人女子は、軽く受け流すのだ。

 夕食まで、30分程時間がある。

 その間、入浴でも?と、祐太朗に提案するも、テレビを見てるからと、断られてしまった。

 お風呂が嫌いという子供は、世の中、少なくない。祐太朗もその内の1人なのだろうか――。

「夕日も見ろよっ」

 呼び捨ての敬語なし。私は、これをいつまで許容できるだろうか。

 祐太朗の命令により、私も一緒にテレビ鑑賞をすることになった。

 流れている番組は、子供向けアニメで、祐太朗の目には、ワクワク感が宿っているが、大人女子の私は、退屈でたまらない。

 しかし、子供とはいえ、一応お客様だ。仕方なく、テレビを楽しそうに見る仲居を演じる。

 お互い、無言で、テレビを見ること、30分――祐太朗の頭上の数字は、80。

 また、ストレス値が下がった。

 ◆ 

 番組終了から数秒、

「飯くれっ!メシッ!」

 亭主関白な祐太朗が、そう叫んだ。

 私は、はい、はい。と、亭主関白な旦那を支える妻の如く、およよよ。そそくさと弱々しく動き、食事を受け取る為、調理室へと向う。

 ――なんて、健気な妻なのかしら。という、妄想をしつつ。

 僅かな時間で、食事をお盆に載せて、客室へ戻った。

 料理をお盆からテーブルに移す。

 テーブルに置く際、雑音が出ないよう、丁寧に置いていく。

「こちらが、今夜のお夕食です」

 仕事をちゃんとする大人の私、偉いぞ。

 料理を目の当たりした祐太朗は、唾液をゴクリと飲み込んだ。

「食っていいか?」

 あらっ?承諾を求めてくるとは、案外、可愛げがあるな。

「いいよ。食べな」

 大人風のお姉さんっぽく、言ってみる。

 祐太朗は、軽く頷くと、オムライスをスプーンでひとすくいし、口に入れた途端、目を見開くと、かなり空腹だったようで、あっという間にオムライスを完食した。

 次いで、唐揚げを平らげる。

 最後に、チョコアイスを食らう。

 ほんの数分で、夕食を食べ終えた。

 ストレス値70。また下がった。

 順調だ。

 食後、また、2人でアニメ鑑賞タイム。

 今度は1時間。私にとってはやや苦しい時間だったが、耐え抜いた。

 しばらくして、祐太朗が、眠さによる意識低下状態なのか、か細い声で言った。

「もう、寝る」

 はい、はい。お布団を敷きますね。

 私が、丁寧に布団を敷く。

 祐太朗は、布団にダイブすると、直ぐに寝息を立て始めた。













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