第9話 客人は男の子 2
祐太朗は、どこに行ったのか?
とにかく探し出す。そして、君はセクハラという、してはならぬ行為をしたのだと、怒ってやろう。美人女子高生のこの私が。
1階から3階までの、全ての客室を捜索するも、いない。
捜索途中、朝日とるいに目撃情報を訊くも収穫なし。
お風呂、露天風呂にも顔を出す。
脱衣所には、ずぶ濡れの2年生女子、ネネがいた。
ネネの役職は、温泉管理人――仕事内容としては、清掃、温度管理、湯質の調整などで、別にずぶ濡れになる必要はないのだが・・・。
刹那、視線が交錯する。
「また、飛び込んだ?」
「ダイブ、気持ちいい」
まあ、恍惚とした顔をしているなぁ。
ネネは、学生服でお風呂に飛び込む、
てか、女子としてどうなの?
なにせ、ずぶ濡れ、下着が透けまくってる。今日は、ピンクのブラかい――。
私の心配をよそに、ネネは、どこ吹く風で、まったく気にする様子はなく、
「気持ちいい」
頬に手をおっつけて、体をくねらせている。
これ以上、同じ空間にいると、変人が
「祐太朗、見なかった?」
ネネはくねくねしながら、
「見た。トイレ。パハップス」
パハップス?なんだ、トイレか。
礼を言って、帰ろうと脱衣所の戸に手を掛けると、
「あっ、男子トイレ、パハップス」
ネネが心配そうに言った。
「うん、それはわかってるから、安心して」
意味不明なネネの心配は、放置。
捜索再開だ。
◆
祐太朗は、自分が宿泊する、2階の客室トイレにいた。
私が、あっちこっち、捜索している間に、フロントで自分の号室を訊いたのだろうか。まあ、それはさて置き。
祐太朗は現在、用足し真っ最中。
「なっ、なに入ってきてんだよー」
この状態なら捕獲は、簡単だ。しかし、想像する。
もしも、祐太朗が攻撃を仕掛けてきたらどうするのか。
今は便器に向けらている、恐らく小さな
そう、下手を打てば、私はネネみたいにずぶ濡れになるやもしれない――やはり待とう。
てか、祐太朗は子供だが男ではないか。
もしこんな場面をけん支配人にでも、目撃されたらまずいなぁ――。
結論が出たところで、ワイリーコヨーテとロードランナーも驚くスピードでトイレから失礼した。
それから、待つこと、わずか数10秒後、祐太朗は手をフリフリさせながらトイレから出てきた。
どうやら逃げる気はないらしく、
私も後を追って入室する。
祐太朗は、私の顔を振り返り見ると、
「おいっ、ペチャ。夢の中なのに、何でオシッコが出るんだよ」
ペチャ?また、このガキは。もしお客様でなかっら・・・。ん?夢か――。
「う〜ん、それは、ほらっ、現実に近い夢?だからかな」
ちょっと、無理があったかな。
「ふ〜ん」
意外に納得した表情だ。
「スッキリしたら、腹減った。ペチャ、飯くれ、飯」
イラッ!このガキ・・・。
恐らく、私の顔――右側頭筋辺りには、縦にスジが深く刻まれているだろう。
「あのね、私のことは、夕日って、呼んでくれないかなぁ」
優しく丁寧に言ってみる。
祐太朗は、首を傾げて、しばし思考すると、面倒くさそうに、
「けっ!わかったよ、夕日。それより、飯くれよ。メシっ!!」
呼び捨てかいっ!
てか、――お前は、亭主関白な旦那かっ!!
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