第7話 魔王との会話Ⅱ
「はぁッ!?」
僕の言葉。
それを聞いた魔王様の表情が驚愕へと染まる。
何を言っているのか理解出来ない。そのような表情を浮かべていた。
「な、な、な……自分が何を言っているのかッわかっているのかッ!?貴様の目の前にいるのはすべてを破壊せし魔王だぞッ!?」
「知っているとも。この世の誰よりもあなたを。だからこそ私はあなたを愛するのですよ。魔王様」
僕は己の感情を真っ直ぐ魔王様へとぶつける。
「……ッ……ッ……ッ!?」
魔王様の表情が面白いほどに次々と変貌し、様々な感情が浮き沈みしているのを確認することができる。
だからこそ僕は内心首を傾げる。
何故魔王様は僕程度の人間の告白を聞いて動揺しているのだろうか、と。
僕はゲームで魔王様を知っていて、だからこそ愛を抱いている。
しかし、魔王様は僕なんて知らないはずだ。僕のことなんて自分を打ち負かした憎い相手、そう思われていて然るべき存在だろう。
だからこそ疑問なのだ。
「う、うるさいッ!いきなりわけのわからないことを言い出す愚か者めッ!ふんッ!貴様に協力など死んでもせんッ!!!」
動揺の末。
魔王様はここからの逃亡を選ぶ。
荒々しい態度で席を立つ。
魔王様がドアへと手をかけたその瞬間。僕はゆっくりと口を開く。
「それでは魔王様。……一人ぼっちの孤独な魔王様。僕の愛の中でぐっすり眠り、きづいたその体を労りください。すべてが障害は僕が取り除きますゆえに」
「……ッ」
魔王様の表情がこれ以上ないほど歪み……逃げるように僕の前からその姿を消す。
「ふふふ」
僕は己の不器用さに苦笑する。
自分の手足を集め、ありとあらゆる財宝を集め、極上の生活を用意した上でのあの言葉。
ゲーム上の主人公様はまっすぐに何もない状態で似たような台詞を吐いたというのに。
僕は未だに魔王様の側に立ち、その手を取る勇気さえない。
「役不足たるな」
圧倒的なまでの役不足。
生まれ持った才能も……自分の根っこである本性も、何もかもが主人公とは程遠い。
しかし、僕はハッピーエンドを創造するのだ。
どんな手を使おうとも。
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