第40話
「おぉ……偉大なる神よ。大いなる邪神を」
僕は祈る。
「敬虔な汝が信徒として祈らん。我が代償にかのものに神罰を」
僕の腹を邪神の腕が貫き、一切の遠慮なく僕の生命エネルギーを奪いとっていく。
そして。
「……ふん」
邪神の腕が伸び、魔王へと触れる。
僕から受け取った貢物の分だけ邪神は働く。この世で最も勤勉な神は祈り通り魔王へと神罰を与えてくれる。
「……」
魔王は己を掴む邪神の手を意に返さない。
ほんの少し。
邪神の手はほんの少しだけ魔王様の皮膚を傷付けるだけに終わってしまう。ただそれだけを行い、消えてしまう。
「そんなものでこの私を傷付けられるはずがないだろう」
つまらなそうに魔王様が口を開いて話す。
あぁ。そうだ。全くもって魔王様の言う通りである。
僕の……既に満身創痍の向こう側の状態で戦っている僕の僅かな生命エネルギー程度を代償として捧げたところで魔王様を大きく傷つけるほどの力は出さない。
「ふ、ふへへ」
僕は倒れる。
既に限界だ。僕の体は。これが魔王様。チートの権化たる勇者と同じステージに立つチートの権化。
ただの凡人でしかない僕とは何もかもが違うステージ。
それでも僕はその上に立つ。
「これで終わりだ。狂人。……手こずらせやがって」
忌々しそうに呟く魔王様は僕の方へと近づいてくる。
もう終わり。その言葉に間違いはない。
「なぁ……まだ。僕の魔法は終わってないんだよ?」
床に倒れ伏したまま僕は口を開く。
イカれ腐った凡人の牙は天才たる魔王様を傷付ける。
それだけで十分。完璧なまでに十分。それ以上を望むなどわがままにも程があるだろう。
「はぁー」
後は天才たちの力を借りれば十分である。
唯一魔王様のチートに対抗出来るチートの力を少しだけ拝借すれば十分である。
「それはまだ序章でしかないんだ」
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