第22話

「うーん。僕ってば君に恨まれるようなことをした記憶はないんだけどなぁ」

 

 まるで親の敵かのような視線を向けてくる黒尽くめの男を見て首を傾げる。

 この子が僕の敵として立つことは知っていた。あれだけ派手に動いていれば僕の情報網にだって引っかかる。


 だが、この子が僕をそこまで恨んでいる理由はわからなかった。


「……わかっているのか」


「当たり前じゃんか。そんなので隠しても無駄だよ?ただの布でしかないじゃないか。久しぶりだね。……ギーア」

 

 ギーア。

 かつて、僕がまだアルファを配下にしたばかりで、五賢会のメンバーですら揃えることが出来ていなかった昔に会った三才年上の少年である。

  

 別に僕はギーアの両親を殺したわけでも、損害を与えたわけでもない。ただちょっと困っていたところを助けてあげただけだ。むしろ良いことをしてあげたと思っている。


「それで?何で僕をそんなにも恨んでいるわけ?」


「黙れッ!薄汚い平民がッ!お前がッ!お前が尊敬出来た父を変えたのだろう!?お前が来て以来!うちの父は平民も優秀であると考えを改悪し、融和的な政策を取り出したッ!お前がッ!お前がッ!」


「あ、そんな理由」

 

 僕を恨む理由が行き過ぎた優生思想なのかと呆れると当時に人間の底知れない悪意に若干の恐怖を覚える。

 それだけの理由でここまで強く慣れるとは驚愕だよ。普通にドン引きレベルではある。


「そんな理由だとッ!?貴様ッ!!!」

 

 僕の言葉を聞いてギーアが激高する。

 ……優生思想は怖いな。人間ってのはこんなんだもの。そりゃナチスも誕生するし、多民族の虐殺も行われるよな。


「ま、君がなんであろうとどうでも良いや。ただただ殺すだけだしね」

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