第28話

 きらめき、輝く数多の虎の爪を持つ腸を斬り裂き、足場として活用していく。


「……再生するだけならともかく、増えるのかよ」

 

 僕の切り裂いた虎の爪を持つ腸の断面からはまた新しい数本の虎の爪を持つ腸は生えてきて、その数がどんどん増殖されていく。


「面倒だな」

 

 僕は舌打ちをうちつつ、虎の爪を持つ腸を足場として宙を舞う。


「……遅いな」

 

 自分の元へと迫りくる虎の爪を持つ腸ではあるのだが、如何せんその速度はあまり早いものではない。

 そのため、問題なく避けることが出来ていた。


「もう十分か」

 

 落ちた虎の爪を持つ腸の数をある程度増やした段階で僕は刀を異空間収納へと仕舞う。

 これならばある程度動くことが出来るだろう。

 

「……」

 

 僕は虎の爪を持つ腸を走り、蹴り、避け、駆け抜ける。

 目指すは子羊の体の中。内臓の上。


「一寸法師作戦ッ!」

 

 僕は子羊の体、内蔵……どうしようもないまでの腐敗臭が漂うぐちょぐちょに溶けている肉の上に立つ。


「燃えろ」

 

 僕は指を鳴らす。

 指より鳴らされた振動が、熱振動へとその姿を変え、魔力によってその振動が大きくなっていく。

 

「んっ」

 

 僕に描かれた魔法陣が光り、どんな魔法の効果であっても大きく上昇させる最高位魔法がノータイムで発動する。


「メェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」

 

 僕より放たれた業火が内蔵を焼いていく。

 落ちた虎の爪を持つ腸は根本より燃え尽きていく。燃え尽きてしまえば再び再生することなんて出来ないだろう。


「……」

 

 僕の肌がじんわりとひりつき、軽いやけどを負う。

 魔法で防いでいたんだけど、完全に防ぐことは出来なかったか……駄目だな。まだまだ。


「……良し、と」

 

 業火によって子羊の体の内部、内蔵はこれ以上ないまでに焼かれ、ボロボロとなっている。


「……見えた」

 

 ボロボロとこぼれ落ちた体の先。

 そこにある濃い魔力の塊を見つめる。


「よっこらっせと」

 

 業火をその場に残したまま、僕はその先へと体を滑り落とした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る