第27話
その魔物、怪物、何か、『 』。
それは羊のような鳴き声を上げる生命である。
それはこの世の何よりも醜悪な生命である。
それは本来この世に産まれ墜ちるはずのなかった生命である。
豪華絢爛に輝く虎の二本足で立っている魔物。
その足だけを見れば、神々しく人々の畏怖と信仰の念を集めるであろう。
しかし、足より上は醜悪そのものであり、人々に恐怖と軽侮の念をぶつけられるであろう。
足より上には皮などと言う大層なものなどなく、肉だけが見え、外気に触れているその内臓からは緑色の液体が吐き出され続けている。
そんな醜悪な肉だるまから極普通の……その巨大には見合わない小さな人間のような腕があった。
顔に当たるはずの場所にあるのは腐り、蝿や蛆の温床と成り果てた円球があるだけだった。
全身に点在している黒ずんだ毛の塊は羊の毛のようにも見える。
腹を突き破り、内臓を外気に触れさせる要因となっている捻じれ曲がっている角。
そんなお腹から出ている何本もの触手のように蠢く長い腸。
腸の先端でキラリと光る巨大で生命の炎を一瞬で終わらせる虎の爪。
「「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええ」」
その醜悪さ故にレミアとアレナは胃の中の物を吐き出してしまう。
僕はそんな二人に一瞬視線を向けた後、視線を前へと向ける。
「さて、と。調理と行こうか……?ねぇ、子羊さん?」
目の前に立つ子羊さんの方へと視線を向けた僕は手に持った刀をクルクルと動かして、不敵に嗤う。
────────ッ
煌めく光が二つ。
「おせぇぞ」
空気を切り裂き、大地を抉りながらこちらへと迫りくる一つのの虎の爪を持つ腸の一つが僕の一太刀のもとに両断され、地面に落ちる。
ジュワ……。
落ちた虎の爪を持つ腸は地面を溶かし、その姿に終わりを告げる。
「ふっ」
「メェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
僕は子羊さんの元へと一歩足を進めた。
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