第4話
『禁忌ノ哭ク頃に』というゲームの主人公である少年、レミア。
かつて世界を支配し、人類を恐怖のどん底へと叩き込んだ魔王を討伐した古の勇者の血筋を継ぐ者であり、封印されし聖剣に認められた少年。
最初は貴族にも太刀打ち出来るレベルの強さを持った平民の中の天才であったレミアはとある事件をきっかけに聖剣の力に目覚め、無類の強さを手に入れ、ヒロインたちと強力しながら魔王復活を目論む連中と戦っていくことになる……。
レミア。
唯一、僕が注意している相手だ。
こいつは……こいつは魔王様を殺しうる可能性を持っている存在の一人なのだ。
それも、どうあがいても自分では勝てない最強の。
今、この場で殺してやりたいが……忌々しい主人公補正で自分が逆境に立った時、無限に覚醒して強くなっていくような奴なのだ。
大した才能を持たずして生まれた僕じゃ殺すことができないだろう。
僕に出来るのはレミアが聖剣の力に目覚めることがないようにすることだけだ。
才なき者が才ある者に勝つために生み出されてきた数々の邪道、禁術などをほとんど全て網羅している僕であっても絶対的な才ある者には勝てないのである。
全く才能というのはどこまで言っても残酷である。
絶対的な才能を持って生まれた前世と大した才能を持たずして生まれた今世の生きて、生きる僕はこの世界の残酷さに苦笑する。
僕は心の中で一人苦笑しながら、会話をしているレミアとアレナとテレシアと第二王女殿下を眺める。
「そんな……!いじめられていたの!?……なんてひどいッ!}
レミアがいじめを受けていたという話を聞いてテレシアが正義の心をもやし、怒りを抱いている。
「まぁ、この世界そんなもんやで。平民なんて貴族の食い物。税として今日食べるものを奪われて餓死し、欲望のはけ口として連れ込まれて捨てられ、娯楽が為に殺される。実際に貴族の行いによって死んだ人は数しれんと。もっとえげつない殺され方をした人かている。殺されへんかっただけで御の字」
それに対して酷く冷静で、残酷な言葉を告げるのが現実を知っているアレナだ。
「まぁ……そうですわね。貴族の方々は己が特別であると自負しておられるようですし……」
「そんなもんだよ。テレシアも変な正義心とか抱かないほうが良いよ。虚しいだけ」
「で、でも……!」
「いずれわかるよ」
「……うん。そうだね」
「せやで」
「はい。そうだと思いますよ……」
いじめという残酷な現実。
それに対して怒りと理不尽を抱くのが一人だけ……地球ではあり得なかった光景だろう。
だが、ここはそういう世界なのだ。
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