第34話
「えー。それでここに置かれているりんごの数が5つ……そのグループが5つあるため、5と5をかけて……」
何をしているのだろうか。
本気で心配になる数学の授業を僕は聞く。
いや、これを数学と呼んでは駄目だろう。これはただの算数だ。
地球とこの世界の数学の発展の差はエゲツないまでに広がっていた。
アルキメデスが一人来ただけでこの世界の数学という世界がひっくり返されるだろう。
「ふわぁ」
低レベルすぎる。
……このレベルに合わせるのが大変だ。
僕が意味のわからない数列とか公式を持ってきても人類の進歩の過程が歪になるだけで、逆に人類の進歩を邪魔するだけとなる。
別に僕は人類の進歩の邪魔をするつもりはない。
基本的には未来の知識を利用する気はない。
「……」
みんな真面目に授業を受けている中、僕と第二王女殿下が上の空で、全然違うことに思考を割り振っている。
……あいつも転生者なのではないだろうか?
ゲームにもエゲツないキャラとして登場していたから、設定通りだとは思うが、実物を前にすると驚愕を隠せないよね。
ラタリタリタ……ラタリタリタ……
つまらない授業の終了を知らせるチャイムが鳴り響く。
「これっで授業を終わりにする」
教団に立ち、授業を教えていた先生が教室から出ていき、自由な休み時間となる。
「いやぁー、やっぱ数学の問題はややこしいな。数字が全然頭の中に入ってきてくれへん」
授業の終了後。
アレナが僕の席へと近づいて話しかけてくる。
「そうでしょうか……わからないところがございましたら、私がお教え致しますよ」
そんなアレナの言葉に対して返答を行うのは僕ではなく、アレナと同じく僕の席へとやってきていた第二王女殿下だ。
「ほんま?そら助かるな。是非お願いしたいとこやな」
クラスの色々な人と交流していたアレナは、第二王女殿下という大きすぎる相手のいる僕の隣こそが最大の市場だと気づき、僕のそばにいることが多くなっていた。
「えぇ。是非お任せください。マキナ様もいかがでしょうか?」
「いえ。数学は問題なく出来ていますので、教えていただく必要はありません」
「そうですか。流石はマキナ様ですね」
「なんで辺境の村出身の君が完璧に数学を理解出来てるん?おかしない?」
「ふっ。あまり平民を舐めるな、ってことだよ」
「私に対してもその口調で良いのですが……」
「いえ。それは不敬ですので」
平民二人に化け物として恐れられている第二王女殿下。
異色すぎるイツメンが僕の周りで完成していた。
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