第19話
双極の太陽が沈み、三天の月が夜。
「どないやねん?うまい?うちらの商会、自慢の料理やねんけど」
僕は商会の食堂で僕はアレナと一緒に夕食を食べていた。
「うん。美味しいよ」
日本では見たことのない……異世界の料理を口に運びながら僕はアレナの言葉に頷く。
お世辞抜きに出された料理はどれも美味しかった。
食文化の進んだ日本出身の僕でも胸を張って美味しいと断言し、日本の人たちにもおすすめできる料理の数々だ。
ゲームでは料理についての詳細な言及も、ムービもなかったけど、こんなにも美味しかったんだね。
ちょっと普通に驚愕。
どうせこんな世界では上手い料理なんてないだろって思ってアルファたちに美味しいご飯を用意してもらってなかったけど……これからは用意してもらおうかな。
「せやったら良かった。君のために用意した甲斐があった。じゃんじゃん食べてや。ようさんあるさかい」
アレナがどんどん食べるように促してくれる。
「なんかしてばかりで申し訳ないな……」
「そんなん気にせんでええで。同じ学園に通う人なんや。仲良うしといて損はあらへんさかいね……まぁ、別に下心があらへんわけでもあらへんけどもあらへんしね。辺境出身の君なら安値で用心棒として雇えるかな、って期待はしてんねんけど」
「やっぱ僕を用心棒として使おうとしているんだよね」
「まぁ、せやな。失望した?」
「いや、それで失望するとかただのやばい奴じゃん……ここまでされて何も期待されてないとか言われる方が心配だよ」
「せやったら良かった……」
アレナが本当に安堵したかのように呟く。
彼女からしてみれば僕が無償の善意は当たり前に存在している……何も知らない人間である可能性のほうが高かったんだ。
今、この場で僕に真実を語るのはかなり勇気のいることだっただろう。
「と、いうことで……早速仕事をしてきたよ」
「へ?」
「よいしょ」
僕は異空間に仕舞っておいた人間の死体を数個取り出す。
「君たちの商会を嗅ぎ回っていた奴らの死体だよ。これが」
僕は笑顔でこれらの死体をアレナに渡した。
これが日本であれば死体ってだけで大事件だが……異世界だと別に人が死ぬことは非日常ではなくただの日常だ。
「ハァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」
それに対するアレナの返答は絶叫だった。
うん。
これ以上ないまでに妥当な反応だろう。
例え死体に耐性があったとしても、いきなり苦労させられてきた敵が無惨な姿で現れたら驚きもする。
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