第20話

「こ、こ、こ、こ、こ……こらどういうこと!?何が起きてんねん!?倒した!?あそこの組織の人間を!?」

 

 アレナは困惑の表情を浮かべ、あたふたしている。


「何が起きてんねん……え?夢?」


「あぁ。安心して良いよ。この後、大きな問題にならないように組織ごと叩いているから」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!?あの王都最強の裏組織である『梅毒』に唯一対抗出来る存在言われてる裏組織『火草』を叩いてるぅ!?ど、どないして!?」

 

 信じられないと言わんばかりにアレナは叫ぶ。

 まぁ……それくらい信じられない出来事ではあるだろう。

 

 アレナのお父さんが運営している商家は結構ギリギリの道を歩いている。

 大胆かつ繊細に商売を進めるアレナのお父さんは非常にやり手であり、世の大商人たちからもあまり良い目で見られていない。

 

 だからこそ、過激派として知られている裏組織『火草』と繋がりのある大商人の手によって潰せそうなタイミングがあればアレナのお父さんの商会を潰すよう、『火草』に対して依頼が出されているのだ。

 

 アレナが僕にここまで優しいのは対『火草』用の戦力が少しでもほしいからだろう。


 ゲームだと『火草』の襲撃を受けて滅ぼされていて、性奴隷として売られてぼろぼろになったアレナの姿が公開されている。

 

 そんなアレナたちだが、僕がアレナたち側につく以上そんな結末になることはないだろう。

 アルファは僕の知識なんかを大きく利用して超巨大な商会を作っているし。アルファに任せておけばなんとかしてくれるだろうという信頼が僕の中にはある。

 

 最悪。

 僕が火草の構成員全員殺してあげれば解決するし。今の僕にはそれくらいを簡単にやることの出来る強さがある。


「くくく……用心棒として僕を利用しようとしたのは最高の選択だよ」


「あ、あんたはほんまに一体何者なん……?『火草』て戦うなんてただの辺境の子供に出来るわけあらへん……」


 僕はアレナのそんな疑問を無視するかのように立ち上がって、アレナの背後へと移動してその小さな肩を掴む。


「まぁ、最悪でもあるけどね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る