第14話
「ふわぁ……」
王立カルド学園の入試試験は二つ。
まず最初に行う筆記試験と次に行う実技試験。
今、行われているのは筆記試験。
「……ねむ」
小さな声で僕はつぶやく。
行われる試験の教科は数学、天文学、魔法学、歴史の4つ。
理系、天文学部(幽霊部員)だった僕にとって数学と天文学なんてお茶の子さいさいだ。
魔法学はゲームの知識で事足りる。
魔法の仕組みはゲーム内と運営によって出版されている設定集にこれ以上無いまでに丁寧に記されている。
それを暗記している僕からしてみれば魔法学もよゆー。
歴史もよゆー。
七年間でこれ以上ないまでに調べ尽くしている。
テストに出てくる程度の問題であれば何の問題もなく解ききることができるだろう。
「……」
テスト開始から30分。
僕は全ての問題を解き終わってしまった。
テスト時間は全部で4時間あると言うのに。
暇な時間の中の暇な時間。テスト中って変なことできないし、テスト終わった後の時間ってこれ以上ないまでに暇だよね……。
「寝るかぁ」
僕はアルファにマッサージをしてもらったので疲れは抜けきっているけど、一眠りすることにする。
だって、やることが本当にないのだ。
試験を受けに来ている大商会の子息、令嬢。テストを前に固まっている力に自信のある脳筋集団。村の神童として、村の期待を一身に背負って試験を受けに来ている村の子供たち。
受けに来ている色々な人の観察も全て終えてしまった。
僕はペンを置き、机に顔を突っ伏す。
もう出来るのは一眠りすることくらいだ。
ちなみにだけど、さっさと机に顔を突っ伏した僕のことを周りの試験管たちは哀れなものを見るかのような視線を向けてきていた。
まぁ、妥当だろう。
試験監督たちには受験者全員のプロフィールが書かれた紙が配られている。名前もわからないような辺境出身の人間が、この場にいる誰よりも早く試験を解き終えるなんて想像にもつかないだろう。
普通に諦めたと思われることだろう。
まぁ……面接試験なんて無いし、関係のないことだが。
社会性なんかよりも実力を追い求めるのがこの学園だ。甘やかせて育った王侯貴族の社会性、性格の良し悪しなど想像に難くない。
実力主義になるのも当然だろう。
「……ん」
そんなことを考えている僕の頭は徐々に暗闇の中に落ちてゆき……真っ黒に染まった。
■■■■■
「ん……」
試験終了の一分前に僕は顔を上げる。
寝ぼけ眼をこすり、あくびを噛み殺す。
「はい。試験終了です。直ちにペンを置き、そのまま実技試験の場所まで移動してください」
試験監督がこの場に声を響かせた。
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