第13話
「ん……?着きそうだね」
自分の索敵範囲内で沢山の人の気配を感知した僕はアルファに告げる。
「はい。そろそろだと思われます」
僕の言葉に対してアルファも頷く。
「じゃあ、僕はそろそろドロンさせてもらうよ」
「え?このまま乗っていかれないのでしょうか?」
「うん……乗っていかないかな。さっきも行ったけど君が用意した物は辺境の村生まれの僕には似合わないかな」
アルファが用意した馬車は王侯貴族が乗るような幾つもの装飾が施された最高級の物。とてもじゃないが、辺境の村の生まれの僕が乗るような代物ではない。
「そんなことございません!むしろ馬車の格がマキナ様の格に足りていないのです!」
「うん。君は僕を神格化しすぎだよ?しすぎでびっくりしちゃうよ?僕はただの辺境生まれの田舎者。君は僕のことを貴族出身だと勘違いしないかな?ん?」
「生まれなど関係ございません……マキナ様の魂の神々しいまでの魂を見れば如何にマキナ様が優れた存在なのか知ることが出来るでしょう……」
「チョット何を言っているのかわからない」
魂とか、いきなり怪しげなことを話さないでよ。
僕の魂とか絶対神々しくないぞ。普通に汚れて汚れ、真っ黒になっていると思う。
「なんでですか!?」
「ということで僕はこの辺で。ありがとね。アルファ。助かったよ」
「あっ……」
僕はアルファの頭を撫でた後、走行中の馬車から降りた。
■■■■■
アルミーレ王国 王都 王立カルド学園。
そこがゲームの舞台となっている学園である。
聖剣に選ばれただけのの平民の少年がこの学園に入学するところからゲームはスタートする。
ゲームでは何の覚悟もない、なよなよな主人公が色々な人と関わり、色々な経験を積むことで肉体的にも精神的にも大きく成長し、魔王を倒すというのが基本的なストーリーだ。
基本的にはそんなストーリーだが幾つも分岐が存在していて、色々なENDが存在している。
まぁ、全てのENDで魔王様は死んでしまうんだけど。……なんで運営はそんなにも魔王様に厳しいのだ。
もはやいじめだろう。
一つくらいあってもいいじゃないか!
「ふー」
僕は内心で運営に文句を言いながら、この学園の入試試験会場へと入る。
この世界は普通に王族、貴族優遇社会。
そして、この国は絶対王政と貴族が強い力を持っていた頃のちょうど中間あたりの力関係が危うい感じの国だ。
この学園にほとんどの王侯貴族が入学し、そして入学するための試験は必要ない。
しかし、平民がこの学園に入るには高難易度の試験を受ける必要がある。
とはいえ、こんな中世みたいな文明レベルの国で平民が王侯貴族と同じような学びを受けられる可能性がある自体がものすごいことだが。
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