第7話

 僕は自分の全身に魔力をまとわせ、化け物へと殴りかかる。


「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃッ!」

 

 それに対して化け物は汚い笑い声を上げ、容易く僕の手を掴み、宙へと放り投げる。


「ッ!?」

 

 宙に投げられ……そして落下していく僕。

 そんな僕を叩き潰すかのごとく化け物は拳を振るう。


「はぁ!」

 

 僕は地面の方へと魔力を放出し、叩きつける。

 魔力の塊が僕の体を押し上げ、落下する僕を狙っていた化け物の拳を回避する。


「ヤァ!」

 

 拳を回避した僕は、拳を振り抜き隙を晒している化け物の頭を蹴り飛ばす。


「ぐぎゃ?」

 

 僕の全力の蹴り。

 それを受けても化け物は平然としていて、僕をおちょくるかのようにわざとらしく首を傾げた。


「ちっ」

 

 舌打ちを一つつき、僕は化け物から距離を取る。

 やっぱりどう考えても勝てない。逃げるしか……。

 

「ぎゃぎゃ」

 

 逃げようとする僕を化け物は……僕よりも遥かに早い速度で追いかけてくる。

 ……逃げられそうにはない。


「クソッタレ」

 

 僕は悪態をつき、化け物に向かって拾った石を投擲する。


「ぐぎゃ」

 

 化け物はそれを避けようともせず、そのまま呆然と突っ立って受ける。

 僕の投げた石が化け物の体に当たり、小さな傷口を作って少量の血を流れさせる。

 起こしたことはたったそれだけ。


「……」

 

 僕は無言で化け物を眺める。


「ふー」

 

 そして大きく息を吐き……化け物との距離を一気に詰める。


「ぐぎゃぐぎゃ!」

 

 正々堂々肉体戦を行うべく距離を詰めた僕は拳を繰り出す。

 化け物は僕の拳を容易く受け止めて、そのまま地面へと叩き落とす。

 

「っ」

 

 地面に崩れ落ちた僕を狙って化け物は足を振り下ろす。

 僕はそれを転がって回避し、慌てて立ち上がる。

 

「ぎゃ!」

 

 体のバランスが不安定なまま、無理やりに立ち上がった僕を狙って化け物が枯れ木のような腕を振るう。

 

「カハッ」

 

 枯れ木のような細い腕。

 そんな腕から放たれる拳は強力の一言だった。

 化け物の拳が僕の腹にめり込む。


「ッ!!!」

 

 僕は全身を貫く激痛を我慢し、念の為隠し持っていたナイフを取り出して化け物の腕を斬り裂く。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!」

 

 ナイフで作った小さな傷口へと、僕は魔力を流し込む。

 魔力は色々なことができる。僕は以前、魔力で川を逆流させたことがある。

 水を逆流することが出来るのであれば……血液だって逆流させることが可能なはずだ。


「死ねッ!」

 

 ものすごく強引に血液を逆流させていく。

 そんな中、僕の手に何か硬いものが当たった。

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