第6話

「レーニャ冒険者団出発ー!」

 

「おー!」

 

 レーニャが元気よく腕を上げて歩き始める。

 僕はその後についていく。


「隊長!今日の探索は何を目的で?」


「今日はなんか凄い薬草を手に入れるのだー」


「おー!」

 

 僕はレーニャのすごい適当なの言葉に歓声を上げる。

 こういうのは雰囲気が重要なのだ。目的の内容なんかどうでも良い。僕が目的を聞いてレーニャが答えるというこの行為にこそ意味があるのである。


「行くぞー」


「ん」

 

 僕とレーニャはゆっくりと森の中を歩き始めた。


 ■■■■■


「……」


 僕は無言で森の中を歩き続ける。


「マキナ……?」


「……」

 

 何故だろうか。さっきからずっと……悪寒が止まらないのだが。

 僕の第六感が危険だと話している。

 本当に何なのだろうか……?


「マキナッ!」


「あぅ!?」

 

 いきなり耳元で叫ばれ、僕は驚愕する。


「な、何……?」


「何じゃないよ!無視しないでよね!」


 僕の隣、すぐ近くに頬をふくらませるレーニャが立っていた。


「あっ……ごめん」

 

 僕はここでようやく今までのことを無視していたことに気づき、レーニャへと頭を下げる。


「謝れたから良し!」


「ありが……っぶない!?」

 

 僕は得意げな様子で頷くレーニャを突き飛ばして、その場を転がる。


「ふぇ!?」


「ゲゲゲ……」

 

 転がった後、すぐさま僕は起き上がり、つい先程までレーニャが立っていた場所に視線を送る。

 そこにいるのは一匹の化け物。

 緑色の肌を持った低身長の存在で、手足は小枝のようにガリガリで、腹の出た存在。

 これだけなら肌の色が緑なだけの人なのだが……目の前にいるのは明確な化け物だった。

 鼻は異様なまでに高くて汚く、髪無く、耳が異常なまでに長い。その瞳に黒目はなく白目。

 そして……牙の伸びる口元にはベッタリとこびりついた赤い跡。

 黄色い汚い牙には人の肉らしきものまでついている。


 僕とレーニャを見定めるように、化け物の白目を前に無意識のうちに足を一歩引いてしまう。

 

 僕の脳裏によぎるのは最近多発している村人の行方不明事件である。

 平和なこの街で村人が……それも複数の村人が居ないという前代未聞の事件で村中が話題にあげているのだ。


「ゲゲゲ……」

 

 木の上から折れた木の枝が降りてくる。


「逃げてッ!」

 

 その瞬間に僕は叫んで、そのまま一気ゴブリンへと距離を詰め、拳を握った。

 大人が殺された相手……それにまだ5歳でしかない僕が挑むのは無謀という他ない……。

 でも……ッ!やるしかないッ!せめてレーニャくらいは逃して見せる!

 

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