第3話

「……まさか、こんなことになるとはな。運命とはちょっと残酷すぎやしないかい?……こんな文明レベルの世界への転生は普通に嫌なのだが……文明の機器が無い世界で現代高校生が生きていけると思っているのだろうか?スマホを寄越せ、スマホを」

 

 僕は空に輝く双極の太陽を眺めながら一人ぼやく。

 村から少しだけ離れ、ちょうど双極の太陽の熱い日差しを遮る大樹の下に僕は居た。

 吹き抜ける風が木々のさざめきを起こし、自分の体を冷やす。


「異世界に転生するとかちょっと予想外すぎやしませんかね?神様さんよぉ」

 

 黒い太陽と白い太陽……地球ではあり得ない二つの太陽が浮かんでいる空。何故か太陽なのに直接見ることの出来る太陽。

 空を見上げるだけでここが地球のどこでもないことがわかる。


 運命の悪戯か、悪魔の悪戯か、はたまた神の試練か。

 ちょうどフライパンを持っていた時に地震が起きて、手を滑らせて落としたフライパンが僕を襲い、その衝撃でジタバタさせた僕の腕が包丁にぶつかり、ぶつかって宙を舞った包丁が僕の心臓にゴールイン。

 ピタゴラスイッチかとツッコミたくなってしまうほどの悪運が重ねった僕はあっさりと死んでしまったのだ。

 いや、料理中なのに気を抜いていた僕が悪いんだけどね……やはり、慣れこそが人類の最大の敵だな。


「これからどうすっかなぁー」

 

 そんな悪運が重なった僕ではあるが、まさかまさかのことに死んでしまった僕は異世界という土地に転生してしまったのだ。

 本当に僕は何か得体の知れないものの祝福か呪詛を受けたんじゃないだろうな?

 

「……」

 

 異世界に転生してから早三年。

 僕が転生したのはど田舎中のど田舎。街に行ったことのある人間が一人も居ないという筋金入りの辺境の村。

 別に何か特別な秘密があるというわけではない。

 

 こんな状況でよくあるラノベのように成り上がるのは厳しいだろう。

 

 この世界に転生してから三年間。

 出来ることはしようと思って、小さいなりに体を動かし、たまたま見つけた魔力っぽい何かを操作したりもしているのだが……この村にはそもそも戦える人が居ないため、自分が今どのくらいの強さなのかもわからない。

 自分の強さがわからないんじゃ、成り上がれるだけの才能があるのか、ないのかもわからない。


 こんな低文明の世界で才能もない人間が村から飛び出す……これ以上ないまでの死亡フラグだろう。一度死んでいても命は惜しい。 

 そもそもの話、僕は今三歳。コミュニケーションを取ることも出来やしない。


「そろそろか」

 

 二つの太陽の傾き具合を見て、大体の時刻を測っている僕は頼りになさすぎる二つの足を使って上手く立ち上がり、家に向かって歩き出した。

 魔力を使えば三歳という軟弱かつ脆い体であってもこれくらいは出来るのである。

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