第1話

「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!クソがッ!!!」

 

 僕、桐ケ谷零夜は発狂しながらゲームのコントローラを投げ捨てる。


「結局駄目なのかよッ!もうEND全部開放しちまったし、追加パッチも全て終えたぞ!完全に希望は0なのかッ!!!」

 

 そのまま椅子から離れてベッドに転がった僕は叫びながらベッドを叩き、自分の中にある激情を吐き散らす。


「あー。クソゲー、クソゲー。ゴミゲーでは。なんで魔王様の救済ENDがないんだよ!魔王様推しの僕のことも考えてくれ!結構魔王様のファンも多いだろ!」

 

 僕はゲームに対する不満をぶちまけ、不貞腐れる。


 『禁忌ノ哭ク頃に』

 2020年にリーリスされた、タイトル名の由来がこれっぽちもわからないタイトルとしても有名なゲームであり、僕がクソゲー、ゴミゲーだと呼ぶゲーム。

 

 ストーリーは実に単純であり、剣と魔法の世界で主人公がヒロインとの恋愛フラグを建てながら、魔王を倒すまでのストーリーとなっている。


 このゲームは高画質で、キャラクターのデザインが良いのはもちろん。

 属性の有利不利、累乗効果や、自分で作る特異魔法などやりこみ要素も多く、無料で出来るハイクオリティーのオープンワールドゲームであり、かなり人気のあるゲームである。

 

 このゲームを語る上で僕が最も強い言葉で語りたいのがこのゲームのラスボスである魔王様についてだ。

 腰まで伸びる美しい銀髪に真紅の瞳。

 身長は2m超えという巨女であり、胸の装甲も巨大……すっごくバインバイン。思わず拝みたくなってしまうくらいはバインバインである。

 頭からは立派な角が生え、背中には出し入れ自在の翼が存在している。

 そんな彼女は気高く、誇り高く、魔王の名に恥じぬ美しく孤高の心を持っている一方、傷つきやすくて繊細。

 一人で様々なものを抱えながらも、足掻き魔王として努力する。

 

 僕はそんな魔王様が最推しなのだ。ラブである、ラブ。


 なのだが……魔王様はどのルートでも必ず死ぬのである。

 助けたくて色々努力し、全てのENDを踏み、ENDが増える追加パッチまで買ったのに……必ず死ぬのである。別に死ななくても良くない?というルートであっても必ず死ぬのである。

 しかも、全ての死が彼女にとって非業の死。全てBADENDであり、魔王様が幸せになるルートはない。

 なんというゴミ運営か。

 死してこそ美しい魔王様……というのにも納得が出来るのだが、やっぱり推しには幸せになってほしい。


「あぁー!!!なんで魔王様は幸せにならないんだよ!僕があの世界に入れば必ず幸せにしてみせるのに!」

 

 僕は心からの言葉を叫んだ。

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