第15話 【LINE】囚われている思考の正体

2021年4月5日 


昼休み、美琴とLINEでやり取りしていると、途中からみゆきちゃんに代わったようだ。

みゆきちゃんからのLINEがとても重要と思ったため、日記に書いておく。

以下、みゆきちゃんからのLINE。



ちょうどね、旅立ちの時なんだよ。


おじちゃんもおばちゃんも1回さ、飛び出して、思いっきり動いて、結果はついてくる。


そしたらこれまで以上に自信になるんだよ。

本当の居場所が見つかるんだよ。


もっとね、みんな自由なんだよ。

やりたいこと。できるし叶う環境なんだよ。


ただね、理解されないから苦しいの。


苦しい思いは束縛するの。


自由になる翼を、飛び立とうとする心を束縛するの。


だから本当の自由にはなれない。


でもね、本当は違うの。

それを望み結果そうなっているのは、自分自身なの。


それでもね、その報われないことに慣れすぎて、そこに安心してしまう。


いつだって闇は自分の中にある。

希望もちゃんと自分の中に見えている。


全ては向き合うか、知らないふりをするか。

それだけなんだよ。


ここまでが、みゆきちゃんからのLINEだ。


相変わらず、退職が保留されている。

会社側も、なんらアクションを起こさない。

ただただ焦っている俺には、励ましになった。


以上、是宮の日記より。


ちょうどこの頃、美琴も退職するかで悩んでいた。


本来副業でしていた仕事で、独立を考えていたのだ。


何度目の転機かと言える程、これまでの美琴は仕事の負担が増えると同時に、副業というものに悩んでいた。


結局医療現場ですり減る度、やりたい仕事への、憧れを強くしていた。


そんな中出会ったのである。

仏事業界に参入するチャンスでもあった。

しばらく半年ほど、墓石に戒名を彫る仕事をこなすトリプルワークをこなしていた。


炎天下の中、墓所の墓誌に戒名を彫る現場彫リに携わっていた。

美琴は職人というものに、強烈に憧れていた。


そんな世界だけで生きていたいと思い、必要とされる職人になりたかった。 


ガラスに生きているときの瞬間を刻み、石には生きた証を刻む。

石への彫刻をこなす事で、また一つ変わる。


石は幾年月と後世に、残るからこその可能性を感じていた。



しかし実際は、金銭問題の部分をはじめ、多くの問題から頓挫。

人を人と見ない性格故の、ブーメラン。

おそらく人生の困難から、連絡が来なくなってしまった。


結果巡り巡って、再び医療現場にいる。

ここまでくると、もはや副業に執着することに、疲れてきて

目の前のことだけこなし、趣味で充分と思えば逆に、仕事がやってくる。


そしてがむしゃらになっても、続かなければ意味がないという事も、理解した。


だから今の美琴は、一番フラットなのかもしれない。

どうしてもやり遂げるという、強い思いは薄れ、表現したいことをするだけ。

その対象が作品であったり、文章を書くことだったりする。

つまり、表現をするという部分では、大きく変わらないのである。


しかし、それはフラットであるからこそ、目立つものとなる。

作風も変わってきているようにも感じる。


そしてよく、言う。

己の敵は、過去作品だと。

誰でもない、過去の自分を超えない限り、ダメなんだと言い、同じテーマに再挑戦する事もあった。


そして前回手がけて3年と言う月日が、作品が変わったことの証明となり、日々変化を求める心を満たす様だった。


多くのものを抱えすぎている時、進めない未来も

手放す事で開ける未来がある。


それを美琴は、感覚的にこなす。

そして、自分の考え方として、生きていく様だった。

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