第13話 この指とまれ作戦

2021年4月8日 まだ在籍。



退職願を出して1か月が経過。

いまだに保留とは、どうゆうことだ?

なにも進展がない。


相変わらず、困っている神社さん、この指とまれ作戦は続いている。


参道に横たわった倒木を寄せたり、倒れた稲荷の置物や蝋燭立てをなおしたり、散乱したゴミや割れたガラスを拾ったり・・・。


なぜかこの神社によらねばならないという思考が、そうさせる。

これから県外にも行くのだろうか?


以上、是宮の日記より。


この困った神社さんこの指とまれ!作戦について、後日天照様から説明があった。

困ったことを手伝うことで、神々との絆を結び、いつか何かあった時お力を拝借するためにも、今できることがあるならば、した方が良かろう?というのである。


その当時はピンと来なかった。

神様に助けられるような案件が、発生するなどと思ってもおらず、ごく普通の日常の延長を、日々こなすだろうと思っていた。


ただ、気にる事で参拝し、呼ばれたかのような困った案件は、徐々に免疫をつけるかのように、必然のようにも思えるようになっていった。


それはやがて、己の直感を信じろと突きつけられる。

困った時のバックアップを得るためにも、信頼されなければならない。

その信頼を勝ち得る為の神社参拝は、積み立て貯金に似ているのかも知れない。


後から大きなモノとして、還元される。

チリも積もればではないが、神様の圧倒的な力を前に、自分達は抗えない自然災害として、学びながらその意味を理解しようとはしていなかった。


ただ、漠然と強烈に行かなきゃいけない。動かなきゃいけないという潜在意識に働きかけるような、思考の揺れを感じた。


その揺れは初めは僅かでも、やがて大きな影響を与える。

それを直感的に学んでいた。


それがいつしか身を守り、美琴を守ることにつながるのだと、少しづつ後になってから、ようやく理解できた気がする。

そして理解したから、変われるかというとそんなに甘くはなくて、いつも追い詰められて、ギリギリまで悩む。

そんな自分が嫌になり、行動に通じていた時期もあった。


そしていつも腹を立てていた。

周りの環境、人の想いに敏感になっていた。

その部分にさえ、気づけないまま過ぎてしまったのなら、おそらく美琴を守ることなどできなかったと思う。


自分のモヤモヤする感情に、苛立ち全ての事象に怒りを覚えた。

ふざけるな‼︎と、俺はいつも心の中で、思っていたのかも知れない。


周りからもたらされる霊障も、追い詰められ作戦も、今なら全て意味あることと感じることができる。


しかし、所詮人間。

どんなに理想を掲げ、美琴を守るんだと言えばかっこいいが、実際は己のエゴを昇華させる為の、自己満足でしかなかったのかも知れない。


それでも今ならわかる。

必要な過程があるということ。


一つ扉を見つけたなら、その扉を開ける鍵が必要になる。


それば数ある答えの中、どれが正解なのかもわからない。

初めから正解など、用意されていないのかも知れない。


それでも俺は賭けるしかなかった。

明るい未来が来ると信じて。

強いていうなら、美琴を守りつつ…自分のストレスの矛先を変えていたのかも知れない。


そのストレスが己に向けられた時、壊れない自信はない。

おそらく誰もが、そうであろう。


しかし、それさえも許してもらえない世界があるのなら、俺の敵こそ

紛れもなく、自分であった。

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