第9話風の神【級長戸辺命】登場

2021年1月13日朝方、夢の中に風の神が現れて、俺は「風の女神様は美琴の中にいるんですね」と、話したところで目が覚めた。



遡ることその3日前の夜、夢の中に白い服を着た色白の女性が現れ、なにかの女神と理解できた。

声が聞き取れないのだが、何かを話していた。

「女神さまですか?」と尋ねたところで、目が覚めた。


その次の夜も夢の中で、再び同じ女性が現れた。

相変わらず声は聞こえないが、「ああ、風の女神様ですか!」と聞くと、頭の中で「そうだ」という声がして目が覚めた。


3日連続で不思議な夢を見たので、気になった。

風の神について調べてみると、級長戸辺命(シナトベノミコト)の名があった。


1月13日夜7時過ぎ、美琴と電話で話をしていた際、途中から口調が変わっていたのだが、しばらく気付かないふりをして話をしていた。


美琴の隣にいた要子が異変に気が付き、「あなたはだれ?」と聞いた。


「名前はなんだったか?諸説ある」という。


俺が「女性のかたですか?」と聞くと、「何をもって女性と言うのか分からない」という。


う~ん、説明が面倒くさいので話題を変えようと思い、「何の神様ですか?」と聞くと、「風である。我は元々自然界に存在している者で、風の神として奉られた」という。


風の神?もしかしてと思い、「しなとべのみことですか?」と聞くと、「そう呼ばれた事もあったな」と申された。


級長戸辺様は、「元々、自然界に派生して存在したものだ。それをいつからか人間たちが名を付け、神として祀ったのだ」

「4月に大きな波が来るぞ。運命の波だ」と申された。


しばらく会話をしたのち、美琴に戻った。

ちなみに美琴は今の会話を覚えていないらしい。


一体どうなっているんだ…


以上、是宮の日記より。




2021年1月14日 どんど焼き


夜、美琴から電話が来た。

出たらみゆきちゃんに代わっていた。


「おじちゃん、どんど焼き始まったね。街の中、綺麗になったよ」と言う。


どんど焼きの炎が、不浄な物、不浄な思いを燃やしたのだろうかと思い、みゆきちゃんに聞いたところ、今度は級長戸辺様に代わった。


そして、「古くから伝わるもの、何故ここまで続いてきたのか分かるか?本物が残ってきたという事だ」と申された。


いかに時代が進もうとも、古くから伝わる伝統行事というのはそれぞれ意味があり、また現代から後世へ、伝え続けていかなければならないのだろうと思った。


来年のどんど焼きの時期、今回の事を踏まえ、対策を練らねばなるまい。


以上、是宮の日記より。




私(諏訪野美琴)は、級長戸辺命というと、初めの印象は穏やかなイメージだった。


その後は是宮とのやりとりを重ねる毎に、だんだん神様も遠慮がなくなるのか、心を許してくださるためか、どんどん個性的になっていくのを感じる。


天照様に至っては、完全に現代の情報に馴染んできているように思える。

どうやら私を通じて見聞きする情報が、神々の知識となるようだった。


そんな中、神々は私の心を見透かすかの様に、次第に是宮をからかい始める。


そんな変化さえも、有難い反面、戸惑う部分がないわけではない。


どんどん個性的に見えてくる神々を、私は身近な存在と感じ、そして全てが新鮮で、何よりかけがえのない時間だと感じている。

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