第8話 街に溢れる不満と霊障
2021年1月10日。
美琴が連日の霊障に悩まされている。
俺も美琴も仕事が休みの為、諏訪野家へおじゃました。
今日は夕食中に美琴からみゆきちゃんに代わっていたが、ふとみゆきちゃんが気を失い、椅子から崩れ落ちた。
まもなく泣きながら、目を覚ました。
「神様から呼ばれたから行ったら、天井から血まみれの手足が何本もでている部屋にいたよ。こわかったんだよ」と言いながら泣いてしまった。
「おばちゃんのこと、まもれなかった」と泣きながら言うので、「みゆきちゃん頑張ったね。」と言ってお菓子を渡してなだめた。
みゆきちゃんは、「街中が汚れてる。みんなコロナで自粛しているから、不満がたまって、街がよごれてるの。」と言う。
「明日将霊神社さんと、越宮神社さんに行って。将霊神社さんの神様は、越宮神社の神様となかよしさんだから。」とみゆきちゃんが言った。
確かに、コロナによる自粛や、感染等で世の中ピリピリしている。
また今年は大雪で除雪が追いつかず、あちこちの道路がわだちとなり、人も車も通行が困難となっていた。
役所には連日、除雪の問い合わせが殺到しているらしい。
たしかにそんな不満が蓄積しているのかもしれないが、そんな思いが今回の血まみれの手足になったのか?
とにかく来年からまた似たような事が起きると予想されるので、来年以降の対策検討のためにも日記に書き記しておく。
とりあえず、明日は将霊神社と越宮神社へ参拝に行く。
以上、是宮の日記より。
2021年1月11日朝8時。
今晩の夕飯は、モツ鍋にしようかと話をしながら、将霊神社へ向かった。
俺、美琴、要子の三人で将霊神社を参拝し鳥居まで戻ってきたところで美琴が、「誰っ⁉︎」と言った。
「誰?って思ったら、誰かが『いっぱい神々に見守られてええもんやな~っ』って言ってる」と美琴が言った。
え?関西系の方?
続けて、「もつ煮込みは、味噌煮が美味しいで~っ」っと言ってるらしい。
そして自らを「俺は狐火が得意な狐や。こっちで火使うらしいから、遠くらか手伝いにきたん。」と言っている。
はて狐火ってなんぞや?と思いながら、越宮神社へと向かい、参拝した。
あとは諏訪野家でゆっくり過ごした。
夕飯にモツの味噌煮を作り、神棚にもお供えした。
食事中は、美琴からみゆきちゃんに代わっていた。
さて、狐火とは・・・?
近々、どんど焼きがあるだろうから、もしかして、どんど焼きの為にここまでこられたのか?
以上、是宮の日記より。
狐の名は銀というらしい。
放浪癖のあるお狐様で、勝運稲荷神社で修行している、花音ちゃんと言う狐の知り合いらしい。
しかし、最近花音ちゃんの存在をあまり感じなくなってしまった。
「オレ、頑張るっす」明るい声が特徴の花音ちゃん。
いや、花音ちゃんだけでは無い。
多くの小さな声の主達を、受信できなくなった代わりに、神様と呼ばれる存在が降りるようになっていた。
逆に多くの声を聞きすぎてしまうと、混乱する事を知りそっと、見守ってくれているように感じている。
それでも身を寄せる場所のなくなった子達の多くは、いろんな役目を担うため、我が家にいてくれている。
いつかそんな子達のために、お社を建ててあげたいとすら考える。
しかし、私や要子の代でしか祀られないお社なら、むしろ作らない方がマシだとさえ思うほど、かつて祀られた場所が荒れてしまっている現状もよく知っている。
子孫繁栄の願いを託した祠。
今でも、大切にされているだろうか?
先人達は果たして、今の日本を想像できただろうか?
子孫の繁栄を純粋に願って未来を託したはずの祠や社が、子孫によってないがしろにされ、打ち捨てられ、荒廃していく今の日本を…。
それでも未来は明るいと信じ、先人達は託した。
託された今の私たちはどうだろうか?
信じて託す事自体を考える余裕もない今という時代に、疲弊していないだろうか?
疫病、戦争、自然災害。貧困。
それら全て、今、私たちに気づけとばかり、これでもかとばかりに…
自分の首を絞める事になってはいないだろうか?
それらは忘れてしまった、人々の感謝する気持ちや、お陰様ですという謙虚な思い。
当たり前が当たり前ではなくなる事で生まれる、不便さを感じさせるために、今があると思うのは私だけであろうか…。
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