第2話ノーダメージ


2020年11月28日、早朝。


ふと、前沢市の高原へ行き、そこから三沢を経由して、利根町にある八本杉を見に行こうとした。

前沢高原を通った際右手側に、林子神社から始まる修験道の看板を見つけた。

林子神社から登ってくると、ここに抜けるのか・・・と思い、急遽修験道の道を神社まで下ることにした。

この時点で雨はふっていなかったので、傘はもたず服装はパーカーにジーパン、持ち物はスマホと財布、車のカギのみで修験道の道を下って行った。

つい一か月前に林子神社から修験道を途中まで登った際は、熊の糞といがぐりの殻があちらこちらに落ちていたので引きかえしていた。

神社まで残り100mくらいのところで美琴からLINEの通知が来た瞬間、斜面を滑り落ちた。スマホも服も泥だらけになってしまった。

美琴からのLINEの内容は、偶然にも『今大丈夫ですか?』だった。無事ではないのだが格好つけて、ノーダメージということにした。


そんな苦い経験をつまされた修験道を下っていく。下っていくということは、結局、登ってこなければ帰られないということに気が付かず、下って行ってしまった。

神社まで半分くらいの距離を歩いたろうか?展望台となっている場所についた。

結局面倒くさくなって、そこからまた引き返して登坂を歩いて行った。

雨がふってきた。何故このタイミングと思ったが、いかんせん、修験道のすぐ脇は、急な斜面だ。

滑り落ちたら、その斜面を上がってこなければならない。落ちても下っていけばいずれ麓の集落にたどり着くけど、ずぶ濡れの泥だらけで人様の家の庭先に出ようものなら通報されかねない。

怪しいものではありません! 斜面を駆け上がろうとして滑って落ちたので、ここまで来ました。と言っても信じてもらえる自信がない。

時折自分に自信がある方を羨ましく思うことがあるが、この時すでに自信を失っていたので、安全第一でゆっくり歩いて登ることにした。


よくよく考えれば、熊との遭遇の危険もあったのだが、この時は考えていなかった。

雨に濡れ、登り坂で汗だくになりながらも何とか車にたどり着き、着替えて利根町に向かった。


途中で美琴に修験道の道へ行ったことを、LINEで送った。

美琴からは「誰かが来いと、言ったんでしょ。おそらく龍神さん。導かれてるの。変性意識状態がね、伝染するんだって。するととんでもない連鎖反応が起こるらしいの。多分今、そういう状況を私中心に作ってしまっているんだと思うんだ。潜在意識の部分の才能が開花するわけ。催眠に似てましてよ。やばい、無意識で招いてしまった。周りを巻き込みかねない案件なので、本来はその術を教えないようにしていると言われてるんだ。」と返信が来た。

俺は何のことだ?と思ったがあえて聞かずに、利根町にある『八本杉』を見に行き、近くにあった御社を参拝して自宅へ帰った。


以上、是宮の日記より。

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