第2話悪夢…

海に向かい駆けることなく、波打ち際で海を眺める水着姿の日代に駆けていく私だった。

水面に反射した陽光が宝石の輝きのように視界に入りながら、日代に抱き付かんとする勢いで彼の隣へと目指した。

夏の燦々と照り付ける陽射しで裸足で真面に歩けるはずがない砂浜をビーチサンダルを履くことなく裸足だった私。

自身も驚いていた。

日代めがけて駆けているなんて何の冗談かと思うし、熱された砂浜を裸足で走れることも現実リアルじゃ不可能だからだ。


彼に触れられる距離が数メートルに近付いた私は、砂に足を取られてバランスを崩して、彼にもたれ掛かる形で倒れる。

膝が砂浜に着きそうになる寸前に、彼が私の身体を支える。

「大丈夫かっ!慌てなくたって俺は置いていかねぇよ、藍歌のこと」

「うんっ!はぁぅっ……あ、きは」

お互いに頬を紅潮させ照れる。

彼の両腕が背中に回されており、抱き締められている。

「藍歌……俺にどうされたい?」

熱を帯びた甘く蕩ける声音で囁き、顔を近付けてくる彼。

私の唇に彼の唇が触れ合う——。


***


「はっ……はぁはぁ。ゆ……め、か。うぅっ……今のは」

日代秋玻と唇を交わすなんて……

呼吸が荒く、夢だと理解した瞬間にえづき、片手で口を抑える。

ベッドを下り、自室を出て洗面所へと向かう。

洗面所で口内を冷水でゆすいだ。


深夜の洗面所には照明は付いておらず、鏡には私の顔が映るだけだ。

私が彼を名前で呼ぶことは……彼が私を名前で呼ぶなんて——。



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