永遠秘密




「で、お兄ちゃんは宇宙に行っちゃったしずりさんがいつでも地球に戻ってこられるように、室外でも使用可能な氷雪空間製造機を開発しようとしているの。それでずっと大学に寝泊まりして家には帰って来ない。と。お母さんとお父さん、寂しがってるよ」

優雨ゆうはどうなんだよ?」

「あー。さびしいさびしい」

「嘘をつけ。奏多かなた君がいればいいくせに」

「うへへ。だって運命の人だし」

「幼稚園からのな」

「うへへ」


 優雨は幼稚園児の頃からずっと恋人であり、すでに将来の約束も交わしている奏多にしなだれかかった。

 奏多は照れながらも、優雨の肩をしっかり掴んでいた。


「あーあー。兄ちゃんは寂しいなあ」

「しずりさんが帰って来たら、寂しくないでしょうが」


 六花は妹の、優雨の言葉に何も返さなかった。

 表面上は。

 けれど心中では血の涙を流しながら、しずりが帰って来ようが来なかろうがどうでもよくて、おまえがいない方が寂しんだよと叫んでいた。

 生物、否、この星に存在するすべての中で、一番好きなのは昔も今も変わらずに妹であり、今でも本気で妹と結婚したいと思っている。

 しかし、それはかなわない。

 血がつながっているからではない。

 妹と相思相愛ならば、血のつながりなど問題ではなかった。

 問題なのは、妹と相思相愛の相手がすでにいることだ。

 妹が好きだ。だから幸福になってほしい。だから、奏多を認めている。

 悔しいが。鼻ちょうちんが二つできるくらい悔しいが、奏多といる時の優雨は一番輝いているのだ。

 応援せずしてどうする。




「優雨。お兄さん、泣いているけど大丈夫?」

「しずりさんが恋しくて泣いているんだよ。そっと見守ってあげて」


 全然違うけどね。

 否定の言葉は口にしない。

 妹への恋心はだれにも言わないと決めたんだ。

 しずりにも。

 妹に似ている、彼女にさえも。

 一生隠し通そうと決めている。

 だって、いやだろう。

 ぜんぶがぜんぶじゃないにしても、妹に似ているから、付き合おうって言葉に頷いたなんて。











(2022.6.27)


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