第14話 ギルドランク戦

―――ギルドランク戦

ギルドの代表パーティー同士で戦うシステムだ。

自分達の評価に納得が行かないギルドには格上のギルドに対して宣戦布告を行う権利がある。これを上位のギルドが受理した場合、ランク戦が成立する。

基本的な仕組みは以下のようになっている。


・宣戦布告を受けた場合、受けた上位ギルドは24時間以内に受諾するか拒否するかを選択する。

・24時間経過時に受諾していない場合は拒否したものとして処理する。

・宣戦布告の受諾か拒否が行われるまで、宣戦布告を行ったギルドは新たに宣戦布告を行うことは出来ない。

・受諾した場合、受諾した側は専用のフィールドへ移動する。宣戦布告側のギルドには専用の転移石が出現し、これに触れると移動する。10分以内に移動しなかった場合強制的に転移が実行される。

・拒否した場合、拒否したギルドの評価が下がる。

・宣戦布告を行ったギルドは、拒否したギルドに対して72時間以内に再度宣戦布告を行うことは出来ない。

・互いのパーティーが転移完了した時点でランク戦が開始する。

・ランク戦はリーダーのHPが0になるか、降参を表明することで勝敗が決する。

・勝利ギルドは敗北ギルドの所持品から3つ獲得することが出来る。また勝利ギルドの評価は上昇し、敗北ギルドの評価は減少する。


俺が稼ぎを一旦切り上げたのはクエストをこなし過ぎて順位が上がると宣戦布告出来る候補の数が減るからというのもある。

プレイヤーであればプレイヤーギルドからの宣戦布告は気味が悪く感じるだろうが、そうでなければ基本的に受理されると読んでいる。この世界ではギルド評価を上げることは無条件に肯定されている感があり、かつNPCの反応は人間的なものが多い。

突然順位を上げてきて調ギルドから宣戦布告を受ければ、血気盛んな冒険者たちはまず受けるだろう。

そしてC級ギルドが所持しているアイテムはC級クエストの通常ドロップよりは確実に良いものだと予想されるため、勝てればかなり美味しいはずだ。


また、恐らくこの仕組みを使って今後のPvPバトルは行われていくはずだ。

ギルド評価はギルドマスターの好感度には関わっていると思われるが、今のところ何に効いているのか解りにくいため、拒否がある程度安定行動に見えなくもない。

しかし、クエスト失敗もランク戦の拒否もギルド評価がペナルティとなっているということは、どこかで順位が強烈に効いてくる場面があると予想している。

このため、ランク戦を早い段階で試しておきたいという気持ちもあった。


一方でランク戦がどの程度危険なものかの判断基準が解らない。

特にC級はギルド名がNo Nameなので相手のギルドの特色をギルド名から予想することも出来ない。一応、リーダーの名前から推測することは出来るが、流石にその予想に全ツッパするのはだいぶイカれている。

なので、その辺りをお頭に聞いてから判断しようというわけだ。


「お頭、ギルドランク戦ってのはどのぐらい死者が出るものなんだ?」

「んん?お頭って私のことかい?

いや、まぁ、それは良いけど、そうだね。C級のランク戦では滅多に死者は出ないね。死者が出るのはリーダーが相当な無理をした時ぐらいさ。」


リリカがくすくすと笑っている。

そう言えば、お頭って声に出して言ったのは初めてだったな。

ともあれ、C級のランク戦では死者がほぼ出ていない。つまり一撃で死者が出るような凶悪な攻撃力を持った相手はいなそうだと言質が取れた。

これは安全性の面でも重要だが、死なない程度の物理攻撃なら守りの加護ウォールブレスで概ね無力化出来るということも意味する。相手を選べば問題なく勝てそうだ。


「なるほど。なら、俺達の上のギルドで魔法を使わない、攻撃主体のギルドってあるか?」

「このリーダーがマッスルのギルドがそうだね。パーティー全員が剣士っていう大分ぶっ飛んだパーティーだって聞いてるから記憶に残ってる。」


…リーダー名マッスルで全員剣士ってマジかよ。。。

俺はあまりにもド直球なそのパーティー編成に衝撃を受けたが、お頭に礼を言いつつ標的に定めた。

悪いな、マッスル。もしかしたら気の良い筋肉なのかもしれないが、俺の糧になってくれ。


そうこうしていると、ルージュとナッシュが戻ってくる。表情を見るに、リングの売却先は見つかったようだ。


「やっぱり、3万だと簡単に買い手がついたね。」

ナッシュもその言に頷き、加える。

「ただ、少し金策をしたいから夜まで待って欲しいと言われてしまってな。」


「解った。それでOKだ。2人ともありがとう。

俺たちは今ランク戦について調べていたところだ。結論から言うと、今からランク戦を挑もうと思う。軽く認識合わせをしたい。」

2人は腕が鳴ると言わんばかりに不敵な笑みを浮かべた。


「っで、基本方針として相手を殺したくないと考えているんだが、リリカのアレは直撃して人間に耐えられるものだろうか。」

前衛2人が渋い顔を浮かべ、リリカが答える。


「んー…多分死んじゃうわね。C級じゃ魔法対策十分ってことも少ないだろうし。」


かなり淡白な反応に少し驚いた。まぁ、戦うってことは綺麗事ではないので冒険者は相手の死にドライなんだろうか。

ともあれ俺は


・相性有利な相手なのでそもそも力の差が大きい想定で、降参を引き出しやすい

・いつでも殺せるという脅しで降参させれば時短になる

・仲間が死んでしまうと最後まで足掻かれるかもしれないし、使う予定の無かった消費アイテムを使われるなど苦戦リスクにもなる

・そもそも相手の数が多いので小回りの利く魔法の方が扱いやすい


などの利点を説明した。認識に特に破綻は無さそうで、皆の納得を得られた。

それで「このぐらいなら死なない」というラインに魔法攻撃力を設定し、その分を詠唱時間の短縮に回した。


これで事前の準備は整ったので、俺たちは宣戦布告を行った。

仕様としては24時間以内になっているが、かなり刺激の強い挑発なので割と早く受諾されると読んではいた。

しかし、数秒で受諾され、転移石が浮上してきたのは流石に驚いた。脊髄反射かよ…


すぐに守りの加護ウォールブレスを掛けると俺たちは転移した。

転移先で待っていたのは、筋肉隆々の二刀流の男と、剣盾持ちのバランスの良さそうな剣士が2人、さらに二刀流の細身の男だった。

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