第4話 カヤの酒場
部屋を出て階下へと降りる。
下はありがちに酒場となっているようだ。冒険者は酒場に集まる。俺が生まれた頃から変わらぬ不文律だ。
そうして周囲を見渡していると、カウンターの中から声が掛かる。
「おー、やっと目が覚めたのかい。」
声の出所を見やると長髪の、30歳前後?に見える女性がいた。
露出こそ少ないが、機能性の高そうな服に謎のマークがついた帽子。ステレオタイプな女海賊が正にこんな感じの服装だ。
また、齢の割に雰囲気があり、海賊の頭をやっていると言われたら間違いなく信じてしまうだろう。
「気分はどうだい?道端で倒れてたからとりあえず寝かせといたんだけど。」
さっぱりとした口調でそう言う。
異世界から飛んできたところを冒険者の宿に拾って貰ったという設定だと思えばよいだろうか。
「あぁ、大丈夫そうだ。ありがとう。」
冷静に考えればここは丁寧語で感謝を伝えるべき場面なのだろうが、雰囲気に押されてフランクに返す。…ここだけの話、慣れない言葉遣いなので、語気は少しキョドった感じだったとは思う。
するとお頭(仮)はこう質問してきた。
「見たところ冒険者のようだが…どこかのギルドに属しているのかい?」
所属してない旨を伝えるとお頭(暫定)の表情が嬉しさに弾ける。
話を聞くと、どうやらここは最近申請して日の浅いギルドなようで、所属する冒険者を探しているようだ。
断ったら無限ループになるのか、ギルドの再抽選があるのかなど少しばかりの興味はあったが、恩もあり、お頭(仮決定)の雰囲気も嫌いではない。俺はギルドへの所属を快諾する旨を告げた。
「ギルド名もまだ決まってない新参のギルドだが、ギルドマスターのカヤだ。改めてよろしく頼む。」
お頭がそう告げ、握手を求めてきたのでそれに応じる。
女性と手を繋いだ記憶などない俺は思ったより柔らかいその手に少し動揺したが、こうして俺は無事ゲームのオープニングを終えた。
さて、これから俺はギルドを大きくするために馬車馬のごとく働くことになるのだが、その前にパーティーを組みたい。
それに関してはお頭の方から申し出があった。「クエストは普通1人でこなすものじゃない。」から始まったお頭の説明に耳を傾ける。
この世界の冒険者は大きく4種類に分けられるらしい。
剣の力を完全に引き出し、盾も扱える剣士。
盾の力を完全に引き出し、剣も扱える騎士。
杖しか扱えず、攻撃魔法のスペシャリストである魔導士。
同じく杖しか扱えないが、補助・回復魔法のスペシャリストであるプリースト。
これらが1人ずついるパーティーがバランスの良いパーティーとされ、最も一般的とのことだ。手が空いているやつに声を掛けるから気になる役職を教えて欲しい旨を告げらた。
恐らく、これはパーティーのキャラメイクに当たる場面なのだろうと考え、俺はこう返した。
「俺はプリーストの役割をこなそうと思っている。剣士2人と魔導士1人を紹介してくれないか?」
お頭は少し驚いたような顔をした後、ニヤリと意味深な笑みを浮かべて俺に少し待っているよう伝えた。
アドバイスに従うならここは剣士、騎士、魔導士を1人ずつ紹介して貰うのが丸い場面だろう。
だが、俺は杖の性能を事前に確認していた。ゲームが進めば変わってくる可能性はあるが、現時点では盾が生み出す防御より魔法のバフの方が防御性能が高い。
さらに重要なことに、俺は最終的にプレイヤー同士で戦わなければならない。
防御役にヘイトを集めてその間に攻撃役で総攻撃するというのは知能の低い魔物には効果が高いだろうが、人間同士で機能する戦術かと言われると疑問だ。
この辺りを考慮してかなり攻撃的なパーティー編成を考えたわけだが、本当に駄目そうならお頭も何か言ってくれるだろう。意味深な笑いを浮かべるだけですんなり通してくれたということは、恐らくこれは運営が想定したルートから大きく外れてはいないだろう。
しばらくしてお頭に呼ばれたのでそれに応じると、テーブルに顔立ちの整った凛々しい男、気の強そうな美人の女性、明るそうな少女が座っていた。
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