第54話 蒼花、襲来。④ 颯太、しっちゃかめっちゃか 〜姉鍋に放り込まれた颯太〜
【マ猫の小ネタ】
一応ではありますが、颯太の呼び方に差をつけています(マ猫が書き分け下手の為)。途中でブレたりもしましたが、どうぞ大目に|д゚)
【蘭、綾乃】
・蘭……颯太
・綾乃……颯太くん
【遠鳴家三人娘】
・
・笹の葉……そー君
・那佳……颯太さん
【久世宮家三人娘】
・久世宮聖良……颯太ぁ!(姉時)、颯太お兄ちゃん(妹時)
・加賀獅……青空君
・東峯……颯太君
【おまけ】
・綾乃の付き人:
※蘭の御付きはよっぽどの事が無い限り、陰からひたすら見守っている設定です( ̄▽ ̄)
今だに書き分けが出来ている気が全くしません。さすがマ猫Σ(゚Д゚)
それでは本編はじまりまーすヾ(≧▽≦)ノ
●
颯太の手を固く握りしめて、正面玄関へと向かう蘭。
「先輩! 先輩っ!」
その言葉に、ぴたり、と蘭が立ち止まる。勢い余って蘭のうなじに顔を突っ込んだ颯太。
「ぶふう?!」
「蘭と呼べ、と言っているだろう。それとも何ぞ、不服でもあるのか?」
ぐぐぐ、と眉に力を籠めてジト目をする蘭に、颯太は慌てて否定する。
「呼んでるじゃないですか! か、顔近いですよ!」
「私は、颯太の前ではただの弟子。由布院、そして先輩ではない。只の蘭だ。さあ、早く呼ぶがよい」
「……? ら、蘭先輩?」
がっ!
蘭が颯太の肩を掴んだ。
「うわ?!」
「先輩はいらぬ、と何度言わせればすむのだ」
「わー! やめてくださいよ!」
至近距離で蘭にがくりがくりと肩を揺さぶられ、近い顔と甘い息に必死で顔をそむける颯太は、とある事に気づいた。
「ちょっと待ってください! 呼び捨てにしろと?!」
「む。嫌だというか」
「きゃあああ! 口を尖らせないで下さいよこの距離でえ!」
「おお、そうだ。ポッキーゲームといくか」
「ポッキーを用意してから言ってくださいよ!」
唇を尖らせて額をグリグリと合わせる蘭を颯太は必死に押し返す。
と、そこに。
「あらあら、蘭ちゃんたら。颯太くんが困ってるじゃないの」
「綾乃か。この時間に合うとは奇遇だな」
「颯太くんに伝えたいことがあったのよ~」
蘭の親友、
そして。
「ほら、二人とも落ち着いて。よいしょっと」
ふわ。
「ほわ?! 皇城先輩?」
綾乃が背中側から颯太を抱え込む。もちろん颯太は大慌てである。
「皇城先輩! 離して下さい!」
「……綾乃。
同じく、綾乃の動きに怪訝な顔をした蘭は颯太の正面から肌を寄せた。年上サンドイッチの完成である。具は真っ赤な顔の颯太である。
綾乃はこれ見よがしに鳴らない口笛を拭いた。
「ふっふふ~♪やーねえ、そんな訳ないじゃないの~。さ、颯太くん、演劇部の部室に避難しましょ?」
「い、息がっ! 何で部室なんですか?」
「うふふ☆ちょっと人目を憚る話なのよ~。ほら、蘭ちゃんも」
首を捻った颯太と顔を赤らめた綾乃に、蘭は鼻をひくつかせた。
ばっ!
「ぎゃー! 先輩、何をしてるんですか!」
蘭はスカートをたくし上げ、その中を確認した。目の前の颯太には当然の如く、スカートの中身が丸見えになる。
「この濃厚な薫りは私からではない。颯太、発情してはいまいか?」
「してませんよ!」
「そうなのか? どら、ちと、颯太の名刀を拝ませてくれ」
「あら、私も見てみたい~」
「見せれませんよ! 皇城先輩まで何を言ってるんですか!」
(こ、このままでは病院の二の舞の予感が! 何とかしないと!)
颯太がサンドイッチ状態で懸命にもがき、内股をふるふると震えさせながら綾乃が颯太ごと後退している
「何やってるのよ! 連絡が取れないと思ったら! 離れなさいよ!」
玄関から蒼花が走り込んできた。
「あら、青空さん。颯太くんに事前に説明しておこうと思ったのに」
「綾乃は姉上殿を知っているのか。丁度いい」
「ええ、お爺様がらみね」
二人の美麗な女子に抱え込まれた颯太を見た蒼花は、当然奪い返すつもりでその中に飛び込む。
年上美少女が、ここに完成した。具は変わらず、大人気の颯太。
「颯太、また嫁なの?! しかも皇城家まで! ちょっと貴方達、離れなさいよ!」
「姉上殿、いい機会だ。颯太は私の師匠、行く
「お爺様の肝入りとはいえ、この温もりは譲れないわ~、あふ☆」
「僕を挟まないでえ……むぎゅう!!」
颯太に襲い掛かる甘やかな薫り、爽やかな薫り、濃密な薫り。
蘭やその他の女子達との最近のわちゃわちゃで女子への耐性がついて来た颯太とはいえ、凛とした美少女のその柔らかさと、
(……あ、頭がボンヤリする……逃げ出したい。けど二人はともかく、まかり間違って皇城先輩にケガをさせる訳には……うぶぶ、息……)
奪い合いによって再度蘭の胸に埋もれながらも、綾乃の身のこなしから、颯太がその身を案じていると。
更なる悲劇が颯太に襲いかかった。
「あー! 私の颯太お兄ちゃんに何するの?!」
「む! 青空君の貞そ……の危機!」
「残り物には福がない、福がない! 颯太君、今日こそは色んなとこ揉みくちゃにしてあげる!」
元男嫌いであったが、今や自称颯太の姉から妹役まで百面相の
その付き人で、『青空君の匂いでおかわり三杯いただけます!』の
同じく聖良の付き人で、颯太の隣争奪戦では出落ちどころか舞台にも上がれず終了の
ここに、姉鍋という颯太包囲網が完成した。
そして、その破壊力は絶大。そもそもが上流階級の令嬢と息女である。
甘やかな薫り、濃厚な薫り、体の芯を揺さぶる本能の薫り、爽やかな薫りなどが颯太のゼロ距離で充満する。
「む、綾乃。股の付け根がもよりとしてきた、颯太を早く寄こせ。綾乃が伝授してくれた『ポッキーゲームの振りをしてちゅっちゅ』をする」
「ポッキーゲームを考案した方に謝って下さい!」
前も、横も。
そして後ろも、密着乙女。
「ちょっと! 何で皇城先輩は蘭先輩に毎回余計な入れ知恵を?!」
「やあん……颯太君今動いたらだめえ♪はあはあ……この前を超えそう」
(※10話/性的レイティング注意)
「返事すら貰えない?! 何故はあはあしてるんですか?!」
「颯太!変なのいっぱいいるから、お姉ちゃんのお胸に飛び込んでおいで!それともお姉ちゃんのお胸に、ばばんと行っちゃうぅ?!」
見なさいよ、颯太と私の仲を! と言わんばかりにシャツのボタンに手をかける蒼花に、全員のツッコミが余すことなく投下された。
「おねえちゃんも十分変だよ?! 弟に何をさせるつもり?!」
「うむ、奇怪だな。時に颯太、ちょっと湯殿へ行こう」
「颯太君の姉の称号をどこの通販で購入したのかしら。知りたいわ」
「お兄ちゃんのかわゆい妹、聖良がもっとイイことしてあげゆ☆」
「青空君! 姉上様より私のお胸の方が見映えも心地も良いはずだ」
「聖良様も夏津奈もやめてー(棒読み)、ぷふう!」
「くう!こいつら全然怯まないぃ!」
密着状態のままにいがみ合い、より加速していく乙女達のフェロモンと発言に倒れ伏そうとしていた颯太。
が、ここ一月の間ラノベ空間で女子達としのぎを削っていた颯太が覚醒した。
(付き合ってられないよ! 僕だって、僕だって! ぎゅうって抱っこされるだけじゃあないんだから!)
「む?」
「やあん!」
「あひゃい!」
ぎゅるん!
蘭、綾乃、蒼花の腰骨の上を指でちょん!と突いた颯太は、その不意打ちに動きの止まった綾乃と蒼花の手から逃れ、身体を限界まで縮ませる。
「きゃ?! もっとぉ!」
「遠慮せずに突き入れるのだ、青空君!」
「にゃっ?! 颯太君、やるう♪」
更に包囲網からの抜け出しを図り、近くにいる聖良、夏津奈、瑠伽の首筋を指でくすぐった颯太が、
「に、逃げ出せた!」
見事、姉鍋の中から飛び出し、駆け始める。
「颯太、何故突端に触れぬか。だが流石、私の師」
「「「「「「あー!!!」」」」」」
ニマニマと笑いを浮かべる蘭、そして響き渡る絶叫。
●
(元はと言えば、全部お母さんのせいじゃないかっ! 絶対、ぜーったい! 文句を言ってやるう!)
校門を駆け抜け、全速力で実家へと向かった颯太は知らない。一番乗りのご褒美に、と改めて指定されてしまった事に。
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