第9話:三人の扱いとダンジョン創り

「それで本当にどうするおつもりですか?」

「まあなんとかする」


 領地に帰ってから数日経った。

 執事の説教やら旅の疲れは抜けたものの、連れてきた三人のことで俺は頭を悩ませている。


「領民にすることも、故郷に送り届けることもダメって言われちゃいましたからね」

「あいつは鬼だ」


 さすがに放り出すとまでは言わなかったけれど、執事の提案は行商人に頼んで町まで連れていかせることだ。


「まあ現実的な話ではありますが」


 しかしあの時の言葉を返すようで格好が付かないことが嫌だった。 それに


「若~」

「若様~」

「こら、ファラ! ちゃんと様を付けなさい!」


 蝶の特徴を持った双子のラーシャとファラ、そして姉貴分で馬の獣人であるリオ。

 この三人が割りと懐いてしまったせいで情がわいてしまった。


「どうしたもんか」

「初めてのお友達ですもんね、うんうん」

「友達というか子供だからな?」

「若も子供じゃないですか」


 ラーシャとファラは12才、リオは15才、俺は14才なので確かに肉体的年齢でいえば同世代である。


 直属の家臣もいないし、特別仲の良い領民もいない。 もしかしたら俺にとって彼らは貴重な存在なのかもしれない。


「喜べメイド、お前の願いが叶うぞ」

「休暇ですか?」

「それは執事に言え」


「ダンジョンを広げる」



 土壁に四方を囲まれた空間、ダンジョンの初期状態から創っていく。


「先日の盗賊の根城ではないんですね?」

「ああ、あのディティールが気に入らないから潰したよ」


 一度創ったダンジョンはリサイクル可能だ。 還元率は低いが無いよりはマシだろう。


「創造:パターン地底湖」


 魔力を消費してダンジョンの領域が広がる。 目の前に広がるのは薄暗い光に照らされた美しい湖だ。


「創造:パターン温泉街」


 まるで早送りのように町が広がっていく。 そして湖から湯気が立ち上ぼった。


「ダンジョンの町に住むなら領民とは言わないよな?」

「もう驚き疲れました」


 これで領民から集めた魔力はすっからかんになってしまった。


 食べ物はしばらく運べばいいとして、せっかく創ったし俺が楽しめるようにしたい。


「メイド一つ頼みがある」




「わあ」

「わあ」

「ここに住んでいいんですか? 本当に?」


 温泉街の旅館に三人を連れてきた。


「ああ」

「でも私たち何も返すものがありません」


 リオが俯いて言ったそのセリフを待っていた。


「じゃあここで働けばいい」


 ここは旅館だ。

 雰囲気は楽しめるが、誰かにもてなされればより楽しめるだろう。


「教師役はメイドがする。 俺は楽しければそれでいい。 励んでくれ」

「はい! 頑張ります!」



「これでとりあえず落ち着いたな」

「約束忘れないで下さいね」


 メイドが念を押すように言った。

 三人の教師役を引き受けてもらう代わりにメイドの望むダンジョンエリアを創ることを約束したのだ。


「ああ、魔力が貯まったらな」

「お願いします」


 メイドの望むダンジョンがどんなものか気にはなるけれど、それは楽しみにとっておくとして、


「しばらくはゆっくりしたい」


「それはもう少し後になるかもしれません」

「執事!」


 執事の登場は相変わらず唐突で慣れない。


「坊っちゃんにお手紙です」


 手紙の宛名を確認するが、見覚えがあるようなないような、


「さんすべりあ?」

「お忘れですか? あのパーティーの時若が助けたヒロインですよ」


 その後の盗賊騒ぎのインパクトが強すぎて忘れていたが思い出した。


「お礼の手紙か? 律儀なことだ」


ーーお茶会へのご招待。


「これって断れる?」

「断れます。 ロマンスの芽は枯れますが」

「……行く」


 さぞ楽しいお茶会になるだろう、そう願うしかない。

 

 

 


 




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