第7話:ダンジョンマスターの戦い方

 俺に戦う力はない。

 けれどダンジョンの中では話が違う。


「ダンジョン創造」


 魔力を消費し、盗賊の根城をダンジョン化した。


 ダンジョンマスターである俺には全てが見える。


 メイドの捕らえられている場所も、酒盛りしている盗賊たちの浮かれた様子も、彼らが蓄えた金品も。


「ちゃっちゃと終わらせよう」


 即席の転移トラップを足元と牢屋の外に設置。

 トラップが発動し、俺は脱獄した。


「おい、てめえどうやって出やがった!」


 見張りの盗賊が剣を突きつけてくる。


「そんなことより足元、気を付けた方がいいぞ」


 すぐさま盗賊の足元に設置した落とし穴のトラップが発動した。


「なんでぇぇぇえええ?」


 盗賊は叫びながら消えていった。


「一人目撃破」


 俺はニヤリと笑って、次の標的の元へ向かった。


 出会った哀れな盗賊を穴に落としたり、爆破したりしつつ、まずはメイドのいる牢屋へやってきた。


「ずいぶん楽しそうなことをしているな」


 服を破かれたメイドに近寄る男が振り向く。


「お前、どうやって牢から出やがった」

「若!?」


 メイドが「早くお逃げ下さいっ!」なんて必死な表情で叫んでいて、まるで悲劇のヒロインのようだ。


「キックル家ラビリス専属使用人シュランゲ」

「は、はい!」

「すぐに終わる。 お前は大人しく待っていればいい」


「ハハハ、やれるもんなら殺ってみろよ?」盗賊の男が嗤う。


「一つ忠告してやろう。 上には気を付けた方がいいぞ」

「そんな子供騙しに引っ掛かるかよ」


ーーカチリ


 盗賊が踏み出した足がスイッチを押した。

 そして俺が設置しておいた罠が発動し、天井の岩が落盤。 悲鳴を上げる暇もなく、盗賊は倒れた。


「あの若」

「ああ、礼ならいいさ。 主人として当然のことをしたまでだ」

「そうですか。 ではボーナスと相殺ということで」

「お、ああ……分かった」


 感謝されたくてやったことではないけれど、なんだか肩透かしを食らった気分になる。


「よし、じゃあ盗賊やっつけに行くからお供してくれ」

「はい。 お供いたします」


(まあ、いいか)


 とりあえず最大の目的は達した。



「ここが盗賊んちのリビングだ」

「リビングですか?」

「とある異世界の言葉で居間という意味だ」

「はあ、それにしては静かですが」


 メイドのナニイッテンダコイツという視線を感じつつ、扉を開けると


「え、穴?」

「すでにトラップにかかってるようだな」

「なんでもありですね……」


 穴の下には気を失った盗賊が一網打尽にされていた。


「これにて一件落着」

「とても微妙な気分です。 帰ったらどう報告すれば良いのでしょうか」


 俺は頭を抱えるメイドの肩を叩いた。


「次は倉庫に向かうつもりだ」

「?」

「俺たちは共に苦労を乗り越えた仲間だろう? 一割」

「二割」


 笑顔のメイドと握手して、倉庫へ向かう。


 倉庫には食料から、宝石、宝飾品、たくさんあるけれど俺には価値が全く分からない。


「メイド、これだけあれば何回王都に行けるだろう」

「そうですね、確実に一回は行けますよ」

「よっしゃああああ!」


 喜ぶ俺を他所にメイドは渋い表情だ。


「全部運び出せればです。 私たちだけではどれだけ時間がかかるか」

「そうか、それなら丁度良い」


 俺は倉庫の奥にある、隠し扉を開いた。


「人手ならここにある」


 そこにあったのは鉄格子。

 中には鎖に繋がれた三人の子供たちがいた。

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