高木瀾(8)

「有った。多分、これだ」

 地下の共同溝には様々な回線や電線、ガス・水道などのパイプが通っている。

 その中から防犯カメラ網用の通信ケーブルの中継器ブリッジを発見。

「業者コードを確認願います」

 今、私達は顔には各種小型センサ付のヘルメット、着ているのは一見普通の作業着に見える……防刃繊維製の作業着と云う、ある意味で変装としても戦闘用としても中途半端な格好。

 そのヘルメットの小型カメラから中継器ブリッジ表面に書かれている文字列を撮影し、後方支援チームに送信。

『安徳セキュリティの業者コードだ』

「誰か来てるか?」

 当然ながら、この状態で誰かに見付かれば、即座に怪しまれる。

「来てる、あっちから2人、反対から3人」

 緋桜がそう答える。

「同じく」

 今度は妹の治水おさみが答えた。

 緋桜は魔法で人の気配を感知し、魔法に似て非なる「水」そのものの存在を感知する能力で、「誰か」が近付いて来ている事を確認した。

「じゃあ、俺があっちで……」

 今村がそう私に言うが……。

「阿呆」

「はぁ?」

「お前の攻撃は威力がデカい分、動きもデカい。こんな狭い所では不利だ。作業の方を頼む」

「はいはい」

「作戦行動中だ」

「あ……了解Affirm

「あと、治水。水蒸気爆発を起こすのは最後の手段だ。お前以外全員殺された級の事が起きるまで、絶対にやるな」

了解Confirm、判ってる」

「誰だ?」

 両側から誰何すいかの声。

「対象の顔認識を頼む」

『5名中3人が「安徳セキュリティ」の社員と九五%以上一致』

 続いて私は数が少ない方に駆け出し。

「えっ?……ぶぎょっ‼」

 1人目の腹に、内蔵を直接揺す「細波さざなみ」の打撃。

 2人目は防御力を高める為か、河童の姿に変身しようとするが……変身が終る前に喉元を指で突く。

「ごっ……」

 しゃっくりのような声を出して2人目も倒れる。

 振り向くと、反対側から来た3人は緋桜の魔法で気絶していた。

「回線の中をパケットが通ってる。それも、かなり大量の……」

 中継器ブリッジのメンテナンス用LANポートに接続したモバイルPCの画面を見ながら、今村がそう言った。

『障害は見せ掛けで、防犯カメラ網そのものは生きてる訳か……』

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