篠原千晶(6)

 化物級の強化装甲服 VS 化物級の狼男。

 瀾は狼男の攻撃を避けるか「護国軍鬼」の装甲で防いでいる。

 一方で瀾の攻撃も……。

 瀾の脛蹴りが命中。そして、その脛にはブレードが有るが……。

 狼男の体毛がのびて、瀾の脛に巻き付き、ブレードで切り裂かれるのを防いだ……と思った瞬間……。

「ぐわっ⁉」

 狼男の絶叫。

 瀾の脛に巻き付いていた狼男の体毛がほどけ……見えるのは……煙。

 狼男の腹に真一文字の火傷……。そして、瀾の脛のブレードが赤熱化していた。

 しかし……銃創よりは遅いものの火傷は、みるみる治っていき……。

 狼男の右手の爪が瀾の頭部を狙い……瀾は、その手首の動脈を左手首のブレードで狙う。

 狼男の攻撃は途中で止まるが、瀾のブレードも……「物理特性を変えられる」らしい狼男の体毛に阻まれる。

 冗談じゃない。

 瀾も強化装甲服頼みのチビじゃない。

 狼男も能力頼みの脳筋じゃない。

 両方とも、とんだ達人だ。

 判ってはいたが……下手に間に割って入れない。

 緋桜が味方の方の狼男に、覚えたてのハンドサインで「すぐに退避。距離五〇m以上」と指示を出す。

 味方の方の狼男は一瞬、キョトンとした表情。

 しかし、緋桜がもう1度同じサインを出すと走り出した。

「えっと……あいつ……不意打ちなら何とかなるんだよね?」

「不意打ちする隙が有ればな……」

「2人は、あいつの気を引き付けて……。あと……」

 緋桜は私の方を向く。

 クソ……。

 ここに来るまで居た「自警団」では、現場でも顔出しが基本だった。

 だが、この「正義の味方」では、現場では顔を隠すのが基本。

 今まで「仲間の表情」から、どれだけ多くの情報を得ていたのか……再認識する事になった。

 仲間の表情が見えないだけで……コミュニケーションが取りづらい。

 「正義の味方」連中が、言いたい事をズバズバ言う奴らばかりなのも……表情その他の「その場の空気」的な何かを介さない意思疎通が当り前だったからだろう。

「お得意の『気配を隠す』魔法お願い」

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