高木瀾(4)

 妹の治水おさみが遠隔操作しているショベルカーのショベルが銀色の狼男……久米銀河の頭に振り降されたが……。

「ああ『突撃』か……今度は正解だろ?」

 一緒に現場に着いた関口が私のハンドサインを見てそう答え、「魔法」の焦点具を兼ねた大型ハンマを構える。

 一方、私はバタフライ・ナイフを大きくしたような形状の長巻の柄を展開し刃を出す。

「うがあああッ」

 久米は頭上で両手をクロスさせてショベルによる攻撃を防いでいた。

 それに対し、ショベルがもう一度振り上げられ……。

「あ……」

「マヌケ」

 久米がショベルの腕に飛び付いたせいで関口の攻撃が外れる。

 しかし、私は久米の股間を狙っ……た瞬間、久米のズボンが弾け飛ぶ。

「⁉」

 「護国軍鬼」の頭部のカメラを白い何かが覆う。

 液体じゃない。

 モフモフしたモノだ。

 構わず私は長巻を振るが……片方の脛に当ったが体毛で弾き返された。

「尻尾も生やせるなんて聞いてないぞ……」

 私は、もう1人の狼男……高校のクラスメイトの今村に苦情を入れるが……。

「い……いや……戦闘に使えるなんて思ってなかったんで……」

 久米は更に両足と更にのばした尻尾をショベルカーの腕に巻き付け……。

「嘘だろ……」

「何でも有りだな……」

「尻尾を使った関節技か……後で対抗手段を考えておくか」

「何で、お前、いつも真面目なのかボケなのか判んない事を口走るんだ?」

 私の感想に対して関口からツッコミが入るとほぼ同時に、ショベルカーの腕は、あっさりヘシ折れた。

「ずいぶんとデカい尻尾だが……前に付いてるモノは思ってたより貧相だな」

 私は久米を挑発するが……。

「何やってんの……?」

 何故か自分の股間に目をやっていた今村に対して緋桜がツッコミを入れる。

「えっと……貧相って、アレが?」

 そう言って、今村は自分の親父の股間を指差す。

「キミのよりデカいの?」

「勃ってない状態でアレなら……多分」

「おい、馬鹿息子。コレの大きさを気にすんのは、自分に自信が……うわっ⁉」

 次の瞬間……。

「ナイス大ボケだ」

 私と関口は、久米が自分の息子のボケに気を取られている隙を狙って同時に攻撃。

 久米は関口のハンマを片腕で受け……もう片方の手で、私の長巻の刃を掴み……しかし、銃声と共に胸から血が……クソ……。

「再生能力まで有るの?」

 みるみる間に塞がる胸の傷口を見て、緋桜がそう聞いた。

「見ての通りだ……。『早太郎』、私達から距離を取れ。ガスを使う」

 私は長巻を手放して、久米から距離を取る。

了解Affirm

「あと、『兄貴』。その場から移動。次の狙撃の準備が出来たら連絡をくれ」

了解Affirm

 私はJR久留米駅内から久米を狙撃したコードネーム「猿神ハヌマン」に連絡。

 秋にウチのチームから1名死人が出てから、銃器関係の訓練を受けた前線要員が不足していて……困った事に、着弾観測手が必要な高威力・高反動の狙撃銃の使用に制約が出ている。

 今回使用したのも、普通の狙撃銃だ。

 そして、私は今村が距離を取ったのを確認し、腰に付けていた防犯スプレーを掴み……。

「そんなのが効くと……ん?」

 防犯スプレーを握った拳で久米の顔を殴り付け、そのまま防犯スプレーを握り潰す。

 周囲には普通の人間を一瞬でのたうちまわらせる更に数十倍の量のカプサイシン入りのガスが撒き散らされ……。

 何かが……おかしい……。

 久米が撒き散らしている涙や涎や鼻水が……どんどん赤黒いモノに変り……しかも、量も異常だ。

 両手首の隠しブレードを展開した途端、久米が私が放した長巻を拾い斬撃。

 手首のブレードを交差させ、斬撃を防ぎ、前蹴り……。

 ……と見せ掛けて……。

「やはり通じないか……」

「古い手だからな」

 脚部に装着された杭打ち機から射出された杭は、あっさり防がれていた。

 久米の目は……まだ充血しているが、明らかにマトモに見えているらしい。

「これも聞いてないぞ。まさか、目や呼吸器の粘膜まで高速再生が出来るのか?」

 私は大声で今村に苦情。

「いや、俺も、そんな事が出来るなんて知らんかった……」

「後で、お前、人体実験だ」

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