高木瀾(2)

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「ら……瀾ちゃん、あれ……何の声?」

 鍋パーティーも終り、ひなたと千晶が帰った後、妹の治水おさみがそう訊いてきた。

「野暮な質問だな」

「い……いや……その……」

「遠距離恋愛中のカップルが2人っきりで同じ部屋に居るんだ。何もやらない訳ないだろ」

「あのさ、どう考えても、遠距離恋愛中のカップルが2人っきりで同じ部屋に居て何かやる時に出す声じゃないよ」

「そうかな?」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「そりゃいいけど、たまには、お前も洗い物手伝え」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「だけどさ……」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「いつもより、洗い物が多いんだ。手伝ってくれ」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「手伝ったら、一緒に、あの部屋覗いてくれる?」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「何で?」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「『何で?』って何で?」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「いいから、洗い物手伝ってくれ」

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

 約一〇分後、洗い物は終り……。

「ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪ ふみゅ〜♪」

「ふみゅふみゅ♪ ふみゅふみゅ♪」

「じゃ……行くよ」

「行くな。悪趣味だ」

「けど、気になるよ」

「気にするな」

「いや、ど〜しても気になる」

「おい、やめろ、開けるな……」

「何やってんのッ⁉」

 そして、治水おさみの……驚愕の声。

 あ〜あ……とうとう……。

「いい加減にしろ……たまにしか会えなんだから……」

「え……えっと……」

「そ……その……うるさかった?」

「ご……ごめん……他人ひとで、そんな事するななんて固い事言わないからさ……」

「あ……なるほど……」

「せめて……人間に理解可能なプレイで勘弁して」

「決めた……彼女にするなら、このプレイに応じてくれる相手だ」

「瀾ちゃんまで、何言ってんだよッ⁉」

 部屋の中では、恐竜の着ぐるみを着たレナと緋桜が抱き合っていた。

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