篠原千晶(2)

「で、晩飯どうする?」

 ミーティングが終るとひなたがそう聞いてきた。

「『どうするって?』どう云う意味だ?」

「いや、らんで鍋やるんで……」

「阿呆か。自警団に居た時、そう云うのが苦手だったのに、こっちに移っても同じ事か。冗談じゃない」

「ああ、そう……」

 そう言って、私は、今の拠点である貸倉庫を出て……大通りに出てバスに乗り……。

 今、住んでるアパートより1つ手前のバス停でバスを下りる。

 少し歩いた所に有る遅くまでやってるスーパーに入る。

 五〇〇㎖入りのビールを4つバスケットに入れ、冷凍食品コーナーに向かい……鍋焼うどんとちゃんぽんを2つづつ取る。

「割り箸付けますか?」

「あ、お願いします」

 レジの店員の口調も九州弁。

 だが、いつの間にか、それも当り前になっている。

 あと、自分がバリバリの標準語なのも……あまり気にしなくなっている。

 アパートに着いてガスレンジの前に立ち……片手にちゃんぽん、もう片手に鍋焼うどんを持って、しばし考え込む。

 腹は減ってるのに、何かモヤモヤする。

 結局、スーパーで買ったモノは、全部、冷蔵庫行き。

 ベッドの上に座って、少し前に買った文庫本をめくり……。

 やっぱり、モヤモヤする。

 目覚まし時計を見ると、いつの間にか、アパートに帰り着いてから1時間は経っていた。

 その割に、読み終えたページは妙に少ない。

 軽く頭をかきながら呼吸を整え……。

 意を決して携帯電話ブンコPhoneひなたに電話をかけ……。

『あ、丁度良かった』

「何がだ?」

『こっち来たいんだろ?』

「うるせえ」

『じゃあ、何の用だ?』

「ああ、わかったよ。そっち行っていいか?」

『こっち来るんなら、スーパーで水炊き用の鶏モモのブツ切りなるべく多くとキャベツ2玉に青葱と水炊き用のスープ買ってきて』

「おい……鍋やるのに材料を準備してなかったのか?」

『いや、予想より早く食い尽くした』

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