第13話 ゴウラとゴウキ


 扉が開く。地上へと降りるコンテナ内部は今や真っ黒に染まっていた。地上にガコン! という轟音と共に降りた。戦いはセツナの勝利に終わった。だがしかし。


「あーあ、兄貴、失敗したのか」

「ゴウキ、あんたなんでゴウラこいつらを通した?」

「うん? そりゃ元々、ツクヨミ財団と武装集団アラハバキは繋がっていたから、だけど? 一部の奴らは本当の反乱集団だと信じてたけどな、お前の憧れのレイコとかさ」


 レイコの姿もリキの残滓もない。恐らく共にゴウキにやられた。


「つまり、あんたも俺の敵って事なんだな?」


 ゴウキは首肯する。イマの亡骸をレイに預けてセツナは目の前のの前に出る。


「そこを退け」

「嫌だね、その死体にはまだ利用価値がある」

「俺の妹だ」

「俺の兄貴を殺しておいてよく言うよ」


 押し黙るセツナ、しかし雷雲はその勢いを増す。もう我慢ならないという風に。


「どういう計画だったんだ」

「それ聞いちゃう? 少し長くなるぜ」

「いいから聞かせろ」

「元々、ツクヨミ財団ってのはカグツチ隕石群の被害受けたこの都市を復興させるための団体だった。そう、この都市、全部に巣食っていたんだ。宇宙エレベーターなんて復興となんの関係もないものをモニュメントとして建てるくらいにはずぶずぶとな。それもそうさ、宇宙移民計画なんて建前、とりあえず入れておいた黄金の盤と同じくらいの意味しかない。期待なんてしてない、ツクヨミ財団が真に求めたのは心因性現実希釈症候群の量産だ」


 雷がゴウキの足元に落とされる。しかし微動だにしない。


「じゃあ、あの対星砲はなんだ。宇宙放逐用のコンテナはなんだ!?」

「対星砲は諸外国への牽制さ、それくらい用意しなきゃ異能力なんてものを独占しておけるわけないだろう? コンテナはそうだな。放射能廃棄物の宇宙放棄用ってアイデアはどうだ? お飾りにしちゃいいアイデアだと思わないか?」

「もう分かった。アンタふざけてんだな?」

「お前とまともに話して特があるのか?」


 雷撃がゴウキに直撃する。しかしそれは鈍色の鎧に防がれる。


「あー……第三次変性サードフェーズだっけか? 案外、簡単に真似出来るな?」

「……ッ!?」

「ようは現実と幻想の比重バランスだ。より幻想に比重を傾けてやりゃあいいだけの話だ。人間の頭がそれについてこれるかはさておいてな」

「お前の頭ならついてこれるって!?」


 無数の電撃がゴウキを襲う。しかし、それは鎧を貫けない。届かない。ゴウキの幻想領域フィールドが広がっていく。セツナの雷雲フィールドが狭まっていく。しかし、そこでセツナは深呼吸をする。ゴウキが高笑いを上げる。


「随分余裕あるなアラハバキのエース!」

「ああ、これが俺の答えだ」


 指で銃のジェスチャーを作るセツナ、世界でも有名なあの形。人差し指をゴウキに向け、親指を天空に立てる。それ以外の指は折りたたむ。


「はっ! それで?」

「荷電粒子砲って知ってるか」

「……これは単純なパワーの問題じゃない。幻想と現実、俺達の空想の強度の問題なんだよ」

「ああ、だから最高強度、一億キロワット超えの一撃だ。受けきってみせろ」


 それは極光という表現じゃ生温い。神光とでも呼ぶべき眩しさ。直視すれば、いやただの人間ならば近づいただけで蒸発する。それが一直線に放たれ直撃した。ゴウキは最期まで自分の鎧を信じていた。しかし、後には何も残らなかった。そう、跡形も残らなかった。

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